>>54

新幹線はまた知らない駅で停まる。そしてまた叫び声。
慌てて後ろを振り返ると、初老の女性が吊るし上げられていた。
相変わらず良く見えないが首に紐が掛けられているのだろう、首の辺りに手をやってもがいていた。手足がシートや壁に当たる音がバタンバタンと聞こえる。

僕はやっとこの夢が何であるか分かった。
恐らくこれは「猿夢」だ。一刻も早く目を覚まさなくてはならない。
しかし僕は自由に目を覚ます事が出来ない人間であるため、しばらくその夢を見る事になってしまった。

とりあえず今何人が殺されているのか、僕は何番目なのかを知っておきたかった。
僕の乗る5号車の後ろ4分の1程は空席のようだ。しかし実は既に殺されていて、そこには「猿夢」のように「活け造り」や「抉り出し」された人が座って(?)いるのかも知れない。
僕が座っているのは前から6番目。まだまだ順番が来るには早いがさっさと目覚めなくてはならない。
しかしなかなか目覚める事が出来ない。その間に何度も聞こえる叫び声。

と、いつもドリンクやサンドイッチを売り来る車内販売の女性がニコニコしながらカートに内臓を乗せて押していくのが見えた。

(もう駄目だ。早く目覚めろ、目覚めろ、目覚めろ)

順番を確認するのに僕はまた後ろを振り返った。
すると後ろに座っていた何人かがスッと消え、同じように席もなくなった。
前から6番目にあったはずの僕の席は真中あたりに来ていた。
慌てる僕に、すぐ後ろに座っていたリーマン風の男が言った。

「目覚めたから席が消えたんだよ。アンタも早く目覚めないとすぐに順番が来る」

僕の8つ後ろの席から血が流れているのが見えた。
大丈夫まだ7人余裕がある。早く目覚めてもう2度とこの夢を見なければいい。

次の駅が来た。

「串刺し」