56 無名さん
>私達の間に割り込む様にして声を被せてきたのはうちのクラスで一番可愛い女の子。彼女は私には到底出せないきゅるんきゅるんした声と仕草でロッカーから辞書を取り出すと彼にそれを差し出した。

>「ねぇ苗字さん」
「ん?」
「さっきごめんね?私が貸しちゃって」
「え…なんで、全然いいよ?」
「そう?」
良かった、と笑った女の子は柔らかそうな髪の毛を翻して自分の席に戻って行った。ふわっと鼻腔を満たした甘い甘い香水の匂いに私は溜息を吐いた。
「かーわい…」
元からあまり自分を飾ったりするのは上手い方じゃない。ああいう、いかにも自分を飾って毎朝鏡に向かって笑顔の練習をしてる感じの女の子が男の子に好かれるんだろう。

>「鶴丸くーん!今日部活ないよね?良かったら一緒に帰ろう〜」
鶴丸に辞書を貸した女の子の軍団が鶴丸の元に歩いてくる。まるで私が見えてないとでも言いたげなほど綺麗に私を無視して。
「あたし、鶴丸くんと帰りたいなぁ」
「…」
特に理由なんて無いのに、何故か少し泣きそうになった。鶴丸と久しぶりに帰れるって思って嬉しかったのは事実だし、誘われてまだ仲のいい友達でいられるんだと安心もした。
行かないでほしいっていう焦燥感と…それから…
「悪いな、今日は名前と帰る約束してるから」
「えぇ?あ、苗字さんいたんだぁ」
「あはは…」
「名前が見えなかったのか?そいつは驚きだな」
こんなに可愛いやつなのに、と私の髪の毛を掻き回した鶴丸。止めてよ、女子がすごい形相で私を見てるから。

露骨なオリキャラsageで夢主age