この話は僕の同年代で同僚の仮に高科くんとします、が体験した話です。

高科くんは無類の旅行好き。旅行好きがこうじて学生の頃から日本全国を渡り歩き日本全国を網羅してしまっていた。

そのつもりが、1ヶ所だけ行っていない場所があった。それは栃木県だった。思いついたらもう車に乗り栃木県に向かった。

いくつかの名所をめぐり、定食屋で昼ご飯を食べ定食屋で聞いた安く泊まれる旅館に取り急ぎ連絡をとり6時に予約をし、日が暮れるまで街をぶらぶらと探索した。

気づけばもう5時を過ぎあたりは夕闇に包まれてしまっていた。そして再び車に乗り予約をした旅館に向かった。

その旅館は坂の上に建っており見た目は値段に合い古いがなかなかに情緒と趣のある旅館だった。

その旅館にチェックインをし、中居さんに案内され荷物を預け長く薄暗い廊下を抜け部屋に通され、いくつかの説明を受け夕食の時間を決めたのちやっと自由の身になれた。

旅館によくあるようなバインダーにはさまれたアンケート用紙に記入していると、どこからか煤けたような焦げ臭い匂いが漂ってきた。

「なんだぁ?」と思い匂いをたどると、ふすまで仕切られたもうひとつの部屋の小さな茶箪笥のような押し入れに行き着いた。

恐る恐るドアを開けると小さな箱が真ん中にポツリと置かれていた。蓋を外し中を開けるとそこには一枚の白い紙と封筒が入っていた。

そしてそこに書かれていた滲んだような薄い文字を読んだ。そこには、

「私は本当は自殺をしようと思いこの旅館に泊まったのですがやはり別の場所で命を絶つことにしました。だから代わりにこの手紙と写真をこの部屋に泊まる方に私のさいごの思いを知ってもらいたく残しました。どなたが読むかはわかりませんがどうか私の存在を忘れないで下さい。それでは永久にさようなら。手紙を読んだ人へ」

そういった内容の手紙が入っていた。

高科くんは嫌な気持ちになり、箱をもとに戻した瞬間封筒に目がいった。あまりの内容に封筒だけ箱に入れるのを忘れていた。