ちょうどお盆初日。お給料が出てすぐ、奮発して折りたたみ自転車を買った。当時の某ビール園で働いていて、自転車で通っていた。
終電が出てしまうくらいに仕事が終わり、のんびり自転車をこぎながらの帰り道。遠回りする気はなかったのだけど、自転車も買ったことだし、と私はいつもと違う道を選んだ。
緩やかな坂を登ると橋にさしかかる。そこを越えて十分位で家に着く。橋はあと少しで家に着くという目安の場所でもあった。
坂を登りきり、ようやく橋の入口を走り始めてただならぬ気配を感じた。橋の柵の線ががずらりと並ぶのを何気なく眺めながら走っていると、突如、ガタガタガタッと柵を揺らす音が響きだす。
何事かと思いながら柵を横目に自転車を走らせるけど、おかしいことに嫌でも気付く。橋の柵が檻の扉をガタガタと揺らすような金属音はどう考えてもするはずがないのだ。
どこから聞こえてくるのかわからない音に恐怖心が芽生える。一刻も早く橋を渡りきってしまいたい。まだ半分も渡りきっていない中そう思っていた。
大きな川をかける橋をようやく半分渡った頃、次の異変に気付く。橋の下にぼんやりと丸い光りがいくつも浮いていた。再び、ガタガタガタッと音が響く。
私一人しかその時橋を渡ってはいなかったし、車は何事もなかったように行き交う。耳を澄ましていたわけでもないのに、女のきゃはははという笑い声が橋の下から聞こえて自転車の速度を早めた。
女のはしゃぎ声にまじって男が楽しそうに話している声も聞こえてくる。相変わらず車は走行音を響かせながら走っていた。
後で思ったのだけど、そんな雑音の中、鮮明に笑い声や話声が聞こえてくるだろうか。いや、聞こえてくるはずがない。場所は橋のど真ん中だし、真下は川だ。人が居ること自体不自然な場所から声は聞こえていた。
怖くなって勢いよくペダルを踏む。足は重く、進んでいるはずなのにやけにゆっくりと感じていた。もがくように走って、ようやく橋を渡りきれると思った、その時。
ガタガタガタッ。
→
終電が出てしまうくらいに仕事が終わり、のんびり自転車をこぎながらの帰り道。遠回りする気はなかったのだけど、自転車も買ったことだし、と私はいつもと違う道を選んだ。
緩やかな坂を登ると橋にさしかかる。そこを越えて十分位で家に着く。橋はあと少しで家に着くという目安の場所でもあった。
坂を登りきり、ようやく橋の入口を走り始めてただならぬ気配を感じた。橋の柵の線ががずらりと並ぶのを何気なく眺めながら走っていると、突如、ガタガタガタッと柵を揺らす音が響きだす。
何事かと思いながら柵を横目に自転車を走らせるけど、おかしいことに嫌でも気付く。橋の柵が檻の扉をガタガタと揺らすような金属音はどう考えてもするはずがないのだ。
どこから聞こえてくるのかわからない音に恐怖心が芽生える。一刻も早く橋を渡りきってしまいたい。まだ半分も渡りきっていない中そう思っていた。
大きな川をかける橋をようやく半分渡った頃、次の異変に気付く。橋の下にぼんやりと丸い光りがいくつも浮いていた。再び、ガタガタガタッと音が響く。
私一人しかその時橋を渡ってはいなかったし、車は何事もなかったように行き交う。耳を澄ましていたわけでもないのに、女のきゃはははという笑い声が橋の下から聞こえて自転車の速度を早めた。
女のはしゃぎ声にまじって男が楽しそうに話している声も聞こえてくる。相変わらず車は走行音を響かせながら走っていた。
後で思ったのだけど、そんな雑音の中、鮮明に笑い声や話声が聞こえてくるだろうか。いや、聞こえてくるはずがない。場所は橋のど真ん中だし、真下は川だ。人が居ること自体不自然な場所から声は聞こえていた。
怖くなって勢いよくペダルを踏む。足は重く、進んでいるはずなのにやけにゆっくりと感じていた。もがくように走って、ようやく橋を渡りきれると思った、その時。
ガタガタガタッ。
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