>>58

もう帰ろうかと思ったのですが、せっかく来たのでもう少し探検してみようということになり、ロビーの前に二階に続く階段があったのでそこを上がってみることにしました。

二階は意外と綺麗で落書きもあまりありませんでした。
左右の通路を照らしてみると、そこは入院用の部屋として使われていたようです。
僕達は右側の通路を選び、一番手前の部屋を覗きました。
部屋にはパイプベッドが四つ、正面に時計が掛けてあるぐらいで、何も変わったことはありませんでした。
僕達は次々に部屋を覗いていきました。

幾つ目だったでしょうか、僕はあることに気がつきました。
部屋の時計がすべて二時で止まっているのです。

僕は自分の時計を見ます。時刻は二時を指していました。
恐ろしくなった僕はそのことを皆に話しました。
しかし皆は、「偶然だろ」と取り合ってはくれません。

更に奥の部屋へと進んでいきます。
やはりどの部屋の時計も二時で止まっていました。
流石に皆も気味が悪くなったのでしょうか、戻ろうということになりました。

その時です。

通路の反対の方から、「カツン、カツン」という音がはっきり聞こえてきました。
タイルの上をヒールかブーツで歩くような……。

皆で顔を合わせると一斉に走り出しました。
僕は部屋の時計を横目で見ながら走ります。時計は確かに二時を指していました。
階段を駆け下り玄関を抜けて一目散に車に向いました。

それでも「カツン、カツン」という音は徐々に大きく聞こえてくるのです。
まるで頭の中でこだまが響いているように。僕達が走るよりも早く、徐々に近づいてくるように……。