僕の怪談系のサイトによく書き込んでくれる玉造さん(仮名)という女性の方がいて、その方がまだ小さい頃(おそらく四、五才の頃)に体験した話。

詳しくいえば母親から口伝えで聞いた話だという。

夏の夕方、蝉しぐれの中 玉造さんと母親は散歩がてら夕涼みに出かけた。幼い玉造さんをあやしながら母親は細い路地を抜けた公園まで玉造さんと手をつなぎ来た。

玉造さんと母親は公園のブランコやら滑り台やら鉄棒で遊んでいた。すると遊ぶのに夢中になり、母親が気づくともうあたりは真っ暗だった。

まずいなと思い大人げなさというか気恥ずかしさを感じて母親は真っ暗な公園の中 玉造さんの肩をかるくたたき 家に帰ることを促すとその感触がどうもおかしい。

砂場で遊んでいる玉造さんが着ている洋服が玉造さんの洋服じゃない。そもそも玉造さんは髪の毛が長い。だが今目の前にいる女の子の髪はショートカットだ。

そもそもなぜこの女の子を玉造さんと思ったのかあとで考えると分からないというが 別の女の子だったんだと勘違いしたことを詫びるが、こんな時間 暗い中、この子はなにをしている?

親はなにをしているのかと不思議に思い、話しかけてみた。

母親「ねえ、お嬢ちゃんなにしているの?お母さんは?」

すると、その女の子がくるりと頭だけで振り返った。

その途端、玉造さんの母親はその女の子の顔にのけぞった。その女の子は女の子というには老けていてまるで80代のおばあさんのような顔でニンマリと笑ったそうだ。

そして後ろから急に「お母さん!」と声が響いた。振り向くと玉造さんが不思議そうな顔でこう言った。

「なんでひとりで言ってるの? お石とお話してるの?でもお石はお話できないよ、ママ」

そう言われ前を向くと 公園の周りを仕切る金網の手前にたてられた小さな石碑のような石があった。

え?と思い数秒戸惑ったが、急にさっきの出来事がよみがえり怖くなって 娘の玉造さんを抱きかかえるようにして 家に駆け足で帰ったという。

玉造さんは言う。

「でも、あれからあの公園って取り壊されて駐車場になっちゃったんだよね。だからあの石碑も今はないの」