高校の同級生、田幡という方に聞いた話をする。

田幡の父親が昔ひとり暮らしをしていたある時期、短期間住んでいた木造のアパートがある。そのアパートでの体験。

そのアパートには六部屋中、父親のほかに三人住んでいた。下の階には誰も住んでおらず上に三人のみの合計四人である。

四人とも仲の良い同級生で、ある夏の日に怪談話をしていた。誰かに聞いた話やどこかで仕入れた話、作り話や今でいう都市伝説

いろんな話をした中で父親の番になり、特別話を用意していなかった父親は即興で作ったいい加減な作り話をした。

それはある夜のある時間になると、雨合羽を着た180センチもある高身長の女が階段を日ごとに一段ずつ上ってきて、一番上まで来ると

次の日の夜からは三部屋ある中の階段を上ってすぐの一番端の部屋からノックをし、そのノックされた人間を次々に襲ってどこかに連れて行ってしまう。

そんなような話だった。

そんな話を聞いたあとあまりみんな乗り気にならなくなり、怪談会はおひらきになった。

それから一週間して友達の一人、階段を上ってすぐの部屋に住む柳井のアパートの部屋に、支払いを滞納していると大家が訪ねてきた。

ゴンゴンという音がして台所の小窓を開くと大家さんが柳井の部屋をノックしている。

柳井の隣の部屋に住む杉原と大家の三人で柳井の部屋に入った。するとそこはもぬけの殻。荷物は残っているのに柳井の姿はなかった。

それから同じ月の一週間あと、おなじように杉原も部屋に荷物を残して失踪した。

おかしいなあと思ったが、しばらくすれば帰るだろうと思ったその一週間あと、夜中にノックが聞こえた。

(コンコン、コンコン)

こんな夜中に誰だと思いドアについている覗き穴から覗いた。すると黄色い雨合羽を着た長い髪の人が見えた。