60 無名さん
改悪蘭ねーちゃん一話

『やっと休みが来る…』


夕暮れ時、橙色の光が 辺り一体を染め上げ 黒い影は長く伸びる

仕事帰りで岐路についていた 苗字名前はふと すれ違った3人家族を 足を止め振り返る

父親と母親の間で 手を繋いでる笑顔の女の子がいる

『(…幸せそうな家族だな)』

その幸せそうな家族の後姿に 名前は自身と、両親を 思い浮かべようとしてみるが、 生憎、そんな記憶がないために 上手く想像することが出来なかった。

その代わり、というわけじゃないけれど 親の声が蘇って来る

お母さんね、名前ちゃんが いないと生きていけないみたい

俺の子じゃないから
産まなきゃよかった
名前はいい子だなさすが 俺の子だ

お母さんやお父さんが今まだだって お前に間違った事を言った事があったか?

だってお前は長女だろう


そこで意識を戻す

『あぁ最悪だ 早く帰ってゆっくりしよう』


名前は小さくなった親子の後姿 から視線を逸らし 歩みを進める


しばらくすると、水滴が 頬に滴る。なんだろうか?と 上を見上げれば、先ほどまでの 橙の景色が、鈍色に様変わりをしていた


まるで私の心の中みたい もう晴れる事のない厚いもので 覆われている感じ、そんな感じを 私はもうずっと引きずっている


『(あーぁ…降って来た 傘持ってないのに、)』
61 無名さん
>>60

家まではまだ距離がある どうせ濡れるなら、もうこのまま 歩いてゆっくり帰ろう そう決めて足早に駆けて行く人を 横目に名前は足を進める


『(本格的に降って来た…)』
だんだんと服の色が変わり、 水分を含んで重く感じる。

もうすこしでアパートに着く。 今日はもうコンビニで夕飯を 済ませよう、そう思い 黄色の点滅信号で立ち止まりながら メニューを考える。


『(…反対側にいるピンクの傘の子、 ふらふらしてるけど、大丈夫かな)』

なんて思った時 その子のピンクの傘が宙に舞い こちら側に飛ばされる

それに驚いた女の子が 目で追いながら走ってくる

『…っまずい』

今歩行者は赤信号なのだ 車に轢かれてしまうっ!


『来ちゃ駄目っ!! 戻って、愛!!』


雨の所為で私の声は届いていないらしく その女の子はもう道路へ飛び出している


『ッ待って、駄目!!』

気がついたら私まで 道路に飛び出していて 小さい子を抱えるが、 戻る時間と、車が突っ込んでくる 時間を考えると、ほかに方法が 見ら足らずに 腕の中のその子を歩道側に 押し出し、轢かれないように するのが精一杯だった

不思議と、その瞬間痛みはなかった。 ただ クラクションの音、 通行人の慌ただしい声、 遠くから聞こえる救急車のサイレン、


そして 私の視界一杯に広がる女の子が 泣きながら謝る声


『(…この顔、妹に似てる)』

「お、おね…お姉ちゃん、大丈夫っ!!? ごめんなさいっわたし、が、どうろに 飛び出し、ちゃった、から!」


私の妹は自分から謝れるほど素直じゃないし そもそもなんでこんな事したんだろう…


嫌いなのに、体が動いてしまったのは 妹に似ていたせいか、 長女としての守らなければ、 という義務感からか


『(…あーぁ、一番上って損だなぁ)』

なんて鈍色の空を見上げながら 私はゆっくりと目を閉じた


拝啓、大嫌いなご家族その他様


どうやら私はこのまま あの世に行くみたいです;}