61 無名さん
つまらなくない人


※紅鮭団


ルールは至って簡単。
相手の心をオレでいっぱいにしてしまえばいいだけの話。
そうすれば、このつまらない状況も終わる。
ただそれだけ。
それだけ…なんだけど。

「空音ちゃん!今日は何して遊ぶ?」
「………」
「おーい!空音ちゃーん!」
「………」
「空音ちゃんってばー!」
「…え?あ、ごめん。何か言った?」
「今日は何して遊ぼうかって」
「とうがらし」
「会話が噛み合ってないよ!?」

このスルースキルだ。
そう、オレが“つまらなくない認定”をした空音ちゃんは、驚くほどオレに構ってくれない。
ちなみに空音ちゃん以外に認定されたのは他に最原ちゃんだけだ。2人とももっと誇りに思ってほしい。
とにかく、そんな空音ちゃんの心を是非ともオレでいっぱいにしたいんだけど…空音ちゃんはなかなか手強かった。

「空音ちゃん、あのね。オレはこの状況がつまらなくて仕方ないんだ。だってこれっぽっちも危機感のない平凡な日々なんだよ?」
「………」
「もう少しスリルがなくちゃ、人間やっていけないと思うんだよね」
「………」
「例えば…殺し合いとかさ。超高校級同士が争う殺し合いなんて、きっとつまらなくないんじゃないかなーって!」
「て?てんとう虫」
「空音ちゃん、これはしりとりじゃないよ!」

ダメだこりゃ。今日も今日とて、徹底的にオレを相手にしないつもりだ。
こうも避けられると…余計に構いたくなっちゃうよね!
それにしてもオレの考えはなかなか名案だと思う。
殺し合いがしたい!なんて言ったらモノクマが聞いてくれたりしないかな?まぁ、その前に最原ちゃん達に止められるのは目に見えてるけど。だってここにいる人達はほぼみんな常識人なんだもん。それもこのつまらない状況を作り上げている原因の一だ。
いざとなれば無理やりでもことを起こそうとは思ってるけど…ね。
でも、今は空音ちゃんが最優先なのだ。

「…もー、しょうがないからしりとりでいいよ」
「しりとり飽きた」
「一方的に始めておいて!?空音ちゃん、そういうのは良くないよ!」
「よ?妖精」
「飽きたんじゃなかったの!?」

こうして、今日もオレと空音ちゃんの愉快で不愉快な1日が過ぎていく。