61 無名さん
比較的最近と思われる裏は上手だお

ドライヤーを受け取ると、それは脇に置き、そのまま三井の肩に手をかけ、背伸びをして口づけた。
三井は三井で、まだ濡れた髪にバスタオルを巻いただけの紫帆にこんなことをされたら、たまったもんじゃない。
彼女からキスをしてくる程度ならともかく、明らかにその先まで匂わせるような絡まり方は
少なくともこれまでにはなかったことだ。

深く唇を重ねながら、紫帆を洗面台に座らせると、膝を開かせあいだに入った。
バスタオルに手をかけ、まだ多少の水気の残る肌に舌を這わせれば、紫帆の息遣いが変わる。
胸の先端にまで達すれば、自分の腕を掴む紫帆の手にキュっと力が入るのを感じた。
与えられる刺激に、背をしならせ、唇を軽く噛みしめて耐える様子はさらに三井を高ぶらせ、駆り立てる。


それから逃げるように、紫帆が後ろ手に手をついて電気を消した。
だが、三井は紫帆に覆い被さりながら、バスルームの灯をつけた。
すりガラス越しにほわっとした明かりが漏れて、こちらの狭い空間をも薄く照らす。

「…消して…よ…」
「いいから」と三井は言うと、紫帆を少し斜めにして壁に寄りかからせ、さらに前をはだけさせた。
そして、いちど舌と舌を絡めて深いキスをしたあと、紫帆の顔を鏡に向けさせる。
露わな自分が映しだされ、恥かしさのあまりに顔をそむけようとするも、
三井にしっかり顎を押さえられているため逸らせない。

「悪趣味…」

口では抵抗するものの、三井の指の動きに、首筋に落とされる優しいキスに素直に反応してしまう。

「こんなとこで誘ってきたおまえが悪い」
「誘ってないも…ん…ン」

甘えるようにはき出された言葉は、三井に塞がれ、かき消される。
もうどうしようもなく火照ってしまった身体は、なされるがまま。


後ろ向きにされ、紫帆が顔をあげると、鏡は重なるふたりをさらし出していた。
湿り気の残る髪が、横からおぼろげに照らしてくる薄明かりが、何より自分自身がひどく淫らだ。
正視できない。
でも……
それでも窺ってしまうのは―――
こんな姿態の自分を許してしまうほど、三井に溺れているからだろうと紫帆は思った。