>>62

結局、その時は木箱は開きませんでした。
店を出て帰りのタクシーが捕まるまでの5分間ほどしか時間が無かったので、さすがに無理でした。

その後、その日は全員何事も無く帰宅しました。

次の日、I君が前日私以外の2人に好評だった木箱を会社に持ってきて、昼休みにデスクワークをしていた私の元へYさんとT君を連れてやってきました。
私はその途端、付き合いが悪いと思われるのを覚悟で、彼らに忠告しました。
「その箱は、開けない方がいいと思う」と。

I君は訝しげな顔をしながら、僕に「兄と同じ事を言うんですね」と返しながらも、得意げに「きっと近いうちに開けて見せますよ」と言って、デスクワークをしている私に気を使い、それきり昼休みは話しませんでした。

そしてその日の仕事が終わった後、4人で桜見をしようということになり、近くの公園でYさんのお母さんから差し入れを頂き、筑紫のお吸い物をすすりながら桜を堪能していました。
そんな時、T君が

「この素晴らしい風景を、4人一緒に写真に収めておこう!」

と言ってポラロイドカメラを出し、一際幹の太い立派な桜をバックに写真を撮りました。

見事な写真が撮れました。
でも、変なのです。

夜だから余計な光が入る心配も無いし、開けた場所だからフラッシュが反射して変色する心配も無いんですけど、写真が、なんとなく薄い赤色を全体的に帯びているのです。

T君は「こういうこともあるさ」と言って、もう1回全員で写真を撮ることになりました。
しかし、またしても同じ現象が起こったのです。

T君は、

「広い範囲で撮るから余計な物が入るのかもしれない。フィルムに余裕はあるし、1人づつ撮ろう」

と言って、私、Yさん、I君、T君の順番で撮ることになりました。