>>62

それを聞いてそいつはさっさとトイレに行った。
だけど戻ってこないうちに消灯時間が来て、廊下の明かりが消えたんだ。

それからしばらくしてもそいつは戻ってこなかった。
班のやつらもそれが心配になったのか、様子を見てきたほうがいいんじゃないかとか俺の方を見て言った。

行ってこいと言ったのは俺だし、寝る予定の場所が入り口に近かったせいもあった。
さすがに皆が俺を見るものだから、仕方なく嫌々トイレまで様子を見に行くことになった。

廊下は真っ暗だった。
非常灯も一つしか見当たらなかった。

部屋を出て右の突き当たりにトイレはある。
ちなみに部屋を出て左へ行き、突き当りを曲がって二つほど先の部屋、その真上の部屋が件の空き部屋だ。

上に行くことはないだろうからと、俺は昼間に聞いた話を思い出さないように「恐くない、恐くない」と思いながらトイレに向かった。

トイレから部屋までの道は一本だけだ。
途中に階段があって上と下に行けるが、階段を通らない限りトイレに行ったやつは俺と鉢合わせするはずだった。

でも、トイレに着いてもそいつには合わなかった。
つまり奴はトイレにいることになる。
トイレの前で少し待ってみるが、中からは物音一つしない。

このまま戻ったら部屋の奴らに何言われるかわかったもんじゃない。
だから俺は明かりの点いていないトイレの中に入った。

手洗い場を通り過ぎて、個室とかがある場所まで来た。
でも聞こえるのは俺の足音だけで、他の音は聞こえなかった。