>>63
一瞬、躊躇い、目を閉じた。
「はあ、はあ、あ、あ、ああ、あァ、で、でる、駄目、あ、はあ、あッ」
 土砂が崩れ落ちた。腸に入り込んでいた空気は湿った音を立て、浴室に悪臭が立ち込めた。ぶりゅりゅりゅと下卑た排泄音が耳を犯す。浣腸により出されたためか、普段よりも柔らかめで、故に匂いもキツい。自分自身が吐き気をもよおす程であった。落ちた糞が跳ね返り、足首を汚す、尻を汚す、身動きできない程に周囲を汚す。前後のため、吐瀉物と混じることが無かったことは救いだった。
 恥辱の境地に居ながら、快感で腰は震えた。肛門を擦り切りそうな勢いで排泄快楽が襲う。大量に仕込まれた浣腸液は腹筋に力を込める度に吐き出された。何かを排泄するたびに四肢が脱力してしまい、肘を折った。眼前の冷えた吐瀉物が悪臭を放つ。
 肛門の快楽に釣られるようにして、ちょろちょろと尿を漏らしていた。あ、あ、ああ、あ。下半身に力が入らない。脳が眩むような快感があった。だらしなく垂れた尿が内腿を伝う。この地獄絵図を創り上げたのが自分で、他ならぬ敬愛する降谷の前で醜態を晒している。涙がぼろぼろ溢れた。違う。こんな姿、絶対に見せたくなかった。
 嫌で嫌で嫌で自分が嫌いで恥ずかしくて死んでしまいたいくらいなのに、脱糞が快楽に塗れた行為であることも事実だった。ふう、うう、と荒い呼吸を繰り返す。そうして鼻腔を広げるたびに己の過ちが眉間に皺を刻んだ。
 悪臭、悪臭、すぐさま口呼吸に切り替えて、それでも喉奥でむわりと匂う悪臭。床に黄土色が散り、どうやら肛門にぶら下がっているらしい糞は意識を後方へ傾倒させた。不快なのか、気持ちが良いのか自分でも分からない。普通の感覚からすれば恐ろしく不快な光景の只中にいるというのに、身体は快楽に打ち震えていた。
「こんなの、ちが、あ、降谷さん、ごめ、なさい……」
「僕が仕向けたことだ、謝る必要なんてない。おいで、綺麗にしよう」