彼氏の家から駅に向かって帰る時、大きな公園を通ります。
山に面している公園なので、猪が出たり猿が出たりはいつものことだそうです。
夜は街灯がなく、あまり通ることがなかったのですが、私と彼氏は好奇心でその公園を通って帰ることにしました。
山と公園の境にフェンスがあります。
フェンスの向こうは雑木林。
そんな中に人が一人立っていました。
昔の兵隊のような格好をしている人が微動だにせず。
木だと思いたかったのですが、周りの木は風は吹かれて揺れています。
私は寒気がして、彼氏に違う道から帰ろうと伝えました。
彼氏は気付いていないようで、違う道に行くことを応じてくれません。
「なんかおるから嫌や!」
と勇気を出して言うと彼氏もその人の存在に気付きました。
私はその場にいたくなくて、彼氏の手を引っ張りました。
でも彼氏は、逆に引っ張りました。
「なにあれ、見に行こう」と。
普段は凄いおとなしい人で、私の嫌がることは一切しない人なのですが、私の手を無理矢理引っ張るんです。
怖くなって泣くと、我に返ったみたいで、二人で一目散に違う道に走りました。
しばらく歩いていると、彼氏に異変です。
「腹痛い」
さっきまで元気だったのにいきなり顔色も悪くなり、そのまま彼氏はタクシーで帰りました。
彼氏はその時だけだったようで、家についてからは腹痛もなくなったようです。
後日、放課後、誰もいない教室で親友にその話をしました。
親友はその公園と家が近く、その公園の怖い話をいろいろ知っていました。
「だってあの公園、夜ヤバいやん。真っ暗やし」
その話を見間違えだと言い聞かせようと二人で話していました。
暗かったから見間違えたってことにしよう、って。
その話を終わり、互いに携帯をいじり始めた瞬間。
教室にラップ音が鳴り響きました。
元々、良くラップ音は鳴るような古い学校だったのですが、普段は一回か二回鳴る程度。
でも、一分間くらいずっと鳴り響きました。
鳴り響いていた時間は二人で顔を見合わせて動くことはできませんでした。