64 無名さん
>>63続き
「女の子って怖いね」


誤魔化すようにため息混じりにそう言うと、あまりのテンションの差が意外だったのかブラッドストーンは驚いたような顔をした。さっきのまるでどこかのヒーローのような行動の僕はまるっきり演技だとでも思ってくれただろうか。(その方がいい。)僕の評価は最低の男で十分だ。


『それだけルーピンのことが好きなんだよ。わたしじゃなくてあの子たちにしたら?』

「好意を寄せてくれる子の気持ちは利用できないよ」


僕のせいでだれかが傷つくなんて、そんなことあってはならない。変身すればだれかれ構わず襲ってしまうような獣がそんなことしていはずがないのだ。


「どうせ本当の僕を知れば嫌いになる」


あの満月の夜の恐ろしい姿を見ればだれだって逃げ出す。僕をバケモノだと罵る。僕がそんな意味を込めて言うとブラッドストーンが悲しそうな表情を見せた。まるで自分に言われたように、深く傷ついたような顔だった。深く聞かないことにした僕は話を変えるためブラッドストーンに怪我の有無を尋ねた。


「ブラッドストーン、怪我はない?」

『ルーピンが絶妙なタイミングだったからね』

「広間から帰る途中だったんだよ」


本当に息を吐くように嘘をつくのがうまくなったものだと自分でも感心する。さらりと嘘をついたが、僕のお腹は今にも独奏を始めそうだった。僕は下っ腹に力を入れてなんとか耐える。アリアに先にトイレから出てもらってから僕もそれに続いた。ブラッドストーンを助けるためだったとしても女子トイレに入ったなんて噂が広まれば僕はただの変態になってしまうのでそれはなんとしてでも避けたかった。


「僕は寮に戻るよ、アリアは?」

『リリーを知らない?』

「さっき廊下で見たよ」