64 無名さん
>「(……轟くん、)」

好きだ。
好きだ、轟くんが好きだ────。

天子の頭の中にはそればかりが思い浮かんでいた。滲んだ涙がとうとうポロリと瞳からこぼれ落ちると、ゆっくり立ち止まったと同時に、苦しく、思わずしゃがみこんだ。ハァ、ハァ、と荒くなった自分の呼吸だけがよく聞こえる。頭がぐらぐらした。横になりたいくらいだった。川に落ちた時からずっと体調が悪い。

「轟くん……」

正直、天子は自分自身の気持ちが恋であるのか、未だによくわからなかった。ただ恋であれなんであれ、もしも轟が自分と同じ気持ちでいてくれたとしたら、それはとても素晴らしく奇跡で、幸せなことのように思えた。昨夜友人みんなが口を揃えて素敵だと言っていた恋というものの魅力は、そういうにわかには信じられないような未来へのときめきにあるのかもしれないと思った。

あのーみんな頑張ってる合宿中に一人恋愛脳になるのやめてくれません?