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しかし、結局I君と会うのはその日が最後になりました。
I君は、お寺に行ったその日の帰宅途中に自宅近くで自動車に衝突され、胴体が切断され、下半身は炎上する車のタイヤに巻き込まれたまま一緒に焼け焦げ、上半身はそこから20メートルほど離れたところにあったそうです。即死だったとの事です。

その日、私とT君とYさんは、死んだI君の母親から木箱を譲ってもらい、それを寺の住職さんのところに持って行きました。
しかし、寺の住職さんは

「この箱は怨念そのものです。それも、もはや人のものではなくなっています。この霊たちの怒りを静めるのは難しいです。供養して差し上げたいですが、時間がかかります。それでもよろしいですか?」

と言いました。
しかし、I君が霊に憑かれる行いをしてからたったの半日で命を落としたのを見ている私達は、それではいけないと思い、自分達で読経を覚える事にしました。

その年の12月、私達が霊の恐怖を忘れかけていた頃になって、Yさんが火事で亡くなりました。
発火の原因は、ストーブの不完全燃焼だったらしいです。

残された私とT君は気味が悪くなり、会社に転勤を希望しました。
事が起きたこの地を離れれば、霊たちも私達のことを追って来れないのではないか、と思ったからです。
しかし、考えたくありませんが、すでに私と彼のどちらかが憑かれている可能性もあるわけなので、お互いの了解で、別々の場所に転勤させてもらう事にしました。
しかしその考えは甘かったと、後から思い知らされる事になるのです。