あれはまだ俺が小学生高学年の時の話だ。
俺の片目は生まれつき視力が低くてな、斜視だったかなんだったか……まあそれを矯正するために手術をするってことで一月ほど入院することになったんだ。

風邪を引いたりした時は近場の病院に行けば済んだんだが、その時は手術ってこともあって数キロほど離れた場所にある大きい方の病院に行くことになったんだ。
駅前の方にも病院はあったが、そっちじゃなくて山の方にある病院に行くことになったんだ。理由は知らないけどな。

まあそんなわけで俺は山の方にある病院に入院することになった。
手術前の検査期間と手術後の検査期間あわせて約一ヶ月の入院。
正直暇だった。
友達は入院初日に着たらそれ以降全然来ないし、両親も仕事の合間に来るくらいだったから大抵は一人でいた。

まあ患者ってのは大抵そんなものなんだなって今なら思える。
でも子供時代のことだ。一人ってのが寂しくてしょうがない。
昼間ならまだいいさ、優しい看護婦さんとかが話し相手になってくれたりした。
携帯ゲーム機なんて持ってなかったし、楽しみはそのくらいだった。

だが夜になると看護婦さんも仕事場に戻る。
あたりは真っ暗。
なんせ消灯時間を過ぎたら光はまったく無い。
あるのは非常口の薄明るい緑色と窓から見える星くらいのもの(山の中だったしな)。

そうして手術も終わって、残るは術後の検査期間を終えるのを待つばかり。
そんな残り数日の夜にちょっと不可解な出来事に遭遇したんだ。