67 無名さん
「…気を失っちゃったか…」

ピクリとも動かなくなった新一を前に女は呆れるように呟いた。

「まあ、こんだけ血を流せば無理もないか…」

長い前髪をかきあげて、女はじっと新一を見つめた。

「(まさか新薬を人間相手に使うとは、彼女が知ったらどう思うか…)」

そんなことを思いながら女は苦笑をすると目の前の状況を見下ろした。

新一の身体が徐々に縮んでいくのを見降ろしながら、女は銃を懐にしまった。

「……考えても仕方がないか」

勝手な行動であるが、自分のこの身勝手さは今に始まったことではない。

「見つけ出すといい その有能な脳で その警察を凌ぐ程の実力で 探せばいい」

彼が此処で死ぬならそれもまた運命

彼が生き永らえ、先に進むもまた運命

所詮自分が賭けるものはそんな不確定なものばかりなのだ。

そういう不安定なものでなければ意味がない。

わかりきった結果を求めているのではないのだから

気を失う新一の髪をくしゃりと撫でると女は立ち上がった。

「君は私を覚えていないだろうけれど…思い出したらあの時の答えを聞かせてね」

そう優しく呟いて、女はその場から遠のいた。

―――問題はそう これからだ


新連載はこんな夢主だよ!