>>67

消灯時間を過ぎた病院ってのは本当に静かなんだ。
聞こえるのは時々見回りをしている看護婦さんの足音と他の患者さんの咳くらい。
それ以外まったく音がしないんだ。
山の中ってこともあって若い人たちより高齢者の患者さんがずいぶん多かった。
そのせいもあって消灯時間を過ぎると全然物音がしないんだ。

何故かその日に限って俺はすぐには眠れなかった。
いつもと変わらない夜なのに、何かすごく恐いっていうか不安だったんだ。
それもあって目が冴えてて、いつもなら寝てる時間だったのに起きてた。

そうこうしてるうちにトイレに行きたくなってきて、でも病室から出るのは恐い。
部屋からそっと廊下を覗くと、足元にある非常口の薄緑色のやつだけしか光は無い。
すごく恐かった。でもトイレには行きたい。
それでついに辛抱できなくてトイレに行くことにしたんだ。
たしかあの時、他の病室の前を通らなくちゃトイレには行けなかった。
それで他の病室の前を通り過ぎる時に

ピッ、ピッ、ピッ、ピッ

っていう規則的な電子音がしてた。
呼吸器をつけてる人もいたから心電図の機械とかのやつだと思う。
それがまた不気味だった。

それでも俺は勇気を振り絞ってトイレに行った。
用を足して自分の病室に戻ろうとして廊下を足早に歩いてた時、前の方から

キィ……キィ……

っていう何かが軋むような音が聞こえてきた。