68 無名さん
短い言葉だったのに、言葉の余韻に色気を感じて、血がさらに沸騰する。この美しい人を、誰も欲さない孤高の人が、どうしても欲しい。大勢の刀剣の主のくせに誰も欲さなかった主。誰のものでもない主。その、唯一になれる。それがどれだけ素晴らしいことか、きっとこの人は知らない。


「死にたいなら、綺麗に切り殺してあげる。だから、俺に頼んで?…ね?どうか、俺だけを…!」


俺の懇願を、この人はどう思うのだろうか。汚いと笑うだろうか?意味が分からないと顔をしかめるのだろうか?それでも、誰かに、誰かに取られてしまうくらいなら俺に殺されてほしい。誰のものでもない貴女を俺だけのものにしてほしい。その命を持って、俺が貴女のすべてを持っていきたい。……きっと、こう願っているのは俺一人ではない。だから、だから早く、貴女を殺したい。誰かに貴方が振り向く前に


「貴方がそれほどまでに私を欲しているのなら」


喉がなる。