俺には仲良い友人が居て、そいつは標準語の大阪人U(男)。霊感があるくせ心霊スポットの類が好きな奴で。要するにちょっとアホだ。
そんなアホと夜中の心霊スポットとやらに行ったことがある俺も相当アホなのだろう。

U「有名な廃ビルだ、ココなんか居んぞ」
俺「U、ちょっと黙れ」

実際 霊感があまり無い俺も、なんだかヤバそうな雰囲気を感じとっていた。
煤けた汚いビル。窓ガラスは割れて地面に散乱し、辺りには重々しい空気が立ち込めている。

「…武器持ってく?」

おどけてガラスの破片を掴むU。手ぇ切るぞ、と軽くいなして いざ中へ。
ザシ、ザシ、と足音が反響する。ビルの中は不気味な静けさで、自分達の足音が不安を掻き立てた。

なんとなく後戻り出来ない雰囲気の中、Uと俺はムリにテンションを上げて会話しながら奥へ進んでいたのだが――

俺「おい、懐中電灯…明かり弱まってないか?」
U「…ちゃうわ…空気が澱んでんねん」

チカチカと点滅しだす明かりに、Uは動揺を隠せないのか関西弁がポロリした。

カタン

U・俺「……」

何かが、背後で動いた。

気配に気付いたその瞬間、一気に悪寒が駆け抜ける。

U「ヤバいわ!アカンて!アカン!」
俺「何!?何か見えんの!?」

U「後ろいる!振り向いたらあかんで!」

ズル… ズルリ…

怖い。それしかなかった。
明らかに今 後ろに得体の知れない「モノ」が居て、隣でUが震えている。心臓が張り裂けそうなほどの恐怖。

_ズル、ズル…
ズ… ズルリ…

何かが這う音。布の擦れる音。
ゆっくりと、近づいてきている。

ズズ…ズル…
ズル…ズルリ…_

…音が、止まった。

俺「今のうちに、逃げっ…!!」
『ア゛ア゛ア゛ァア゛ア゛ァア゛ァ゛アア!!!!』
U「アカー―――――――ン!!!!」

Uが叫んだ。
怖さに耐えきれず二人で無茶苦茶に走って逃げた。

床を這っていたモノ。汚い布を体に巻き付けた女。
女には、目が無かった。