>>70


目を閉じて耳を塞いで俺はじっとしていた。

そうしてどのくらい時間がたったのかわからないけど、突然カギを掛けたところがガチャガチャ鳴り出した。
すごく力を入れて動かしてるみたいで壊れるんじゃないかって思ったほど。

それもすぐに収まって、ふと上に視線がいった。
そこにね、ぐちゃぐちゃになった女の人の顔があった。なんか肉がただれてるような切り傷だらけみたいな顔。

俺は恐くなってカギをあけて個室から出た。でもそこには何もいなかった。
まだ話は終わらない、終わらなかったんだよ。

だって個室を出たあとにまたあの音が聞こえたんだ。
トイレの入り口の方から

キィ……キィ……

って車椅子の音が聞こえたんだ。

じっと俺は入り口の方を見ていた。
すると車椅子が通りかかって……そのままこっちに入ってきた。
看護婦さんが車椅子を押しながら俺の方に近づいてきたんだ。
暗くて看護婦さんの顔が見えない。車椅子には誰かが座ってた。

なんで電気をつけないで入ってくるんだろうとか、そんなことを考えていられる余裕はなかった。
暗闇でも慣れると割りと物が見えるようになるんだ。
それで近づいてきた車椅子を見てたら……座ってる人の頭がなかった。

恐くて俺は座り込んで後ずさりしたんだ。
声も出せなくて金縛りにあったようにのどが引きつったようになって、それで看護婦さんの方を見ると両手を自分の頭に添えていて、いきなり頭を抜いた。