>>71

ちょっとこの時聞いた声はぼやけた感じで正確には覚えていないけど、笑うような楽しそうな声で

「もうこれにも飽きちゃった……」

そういうような声を聞いたんだ。子供のような声でそう聞こえたんだ。
そして頭のない看護婦さんが抜いた頭を捨てて、今度は俺の顔に添えた。

――それで目を覚ました時、自分の病室のベッドにいたんだ。
夢だったんだ。良かったって思った。
本当に夢で良かったって最初は思ったんだ。

でもね……おかしいんだ。
夢で良かったって思ってるのにね、本当にあったんだって理解してるの。
それでトイレに確認しに行ったんだよ。あれが夢だったのかどうだったのか。

俺はトイレの個室を使う時は一番手前って決めてたんだ。
近い方が楽って思ってたんだよ。だから一番奥の個室に行くことはないんだ。
トイレの個室が全部埋まるなんてことなかったしね。

だけど一番奥の個室を空けようとしたときにね、ぬるっとした感触がしたんだ。
変だなって思って手を見てみると血みたいな赤い何かがべっとり付いてた。
ドアノブひねって、気持ち悪いって思いっきり手を引いたら扉が開いた。

そこの壁中に赤い文字で「助けて!」って書かれてたんだ。