72 無名さん
「......どうして、私の気持ちが分かってくれないのですか」
『......ッ』
「私はこんなにも名無しさんの事を想って愛でているのに...何故気付かないのです?他に好きな人が出来たからですか?私の事嫌いだからですか?......もし名無しさんに好きな人が出来たらその相手を形が無くなるまで潰します、私の事が嫌いなら好きになれるよう努力しますよ」

優しくも狂気に塗れた鬼灯の声を名無しの耳の中で擦り込ませる。温かい彼の両手で絞められた首は次第に気道を塞ぎ酸素が薄れ、意識を混濁させた。目の前は暗いのに、波紋を広げたような景色が浮かび始め次第に気を失い始めていた。

「名無しさんが私と愛を深める約束すると"ゆびきり"してくれるまで、甚振り続けますよ。私無しじゃ生きられない程の身体になるまで、ね...」

普段笑わない鬼灯の口から漏れる笑い声が、名無しの意識を連れて行くかのように響き渡り、彼女の意識は完全に消えていったのであった。

「名無しさんは獄卒なので、そう簡単には死なないでしょう?少しだけ寝かしてあげます、夢の中でも私に愛されますよう願って...」

そう言って鬼灯は意識を失った名無しの頬にキスを落とした。