>>73
なにせ、広場からここまではさっき通ったけもの道をまっすぐ来るだけなんだから、迷うわけがない。
落ちて迷い込むような淵も窪みも無い。だからそうに違いない、という事だったのだ。

で俺たちはとにかくそいつの家に確かめに行くことにした。
だけど、そこに友だちはいなかった。

自分たちの遊びを隠すこともできず友だちの親父さんに事情を話した。
親父さんは顔色を変え、寄り合いまで車で行ってしまった。
俺たちはどうしていいかわからずとにかく帰ることにした。

家で事情を話すと普段じゃ考えられないくらいこっぴどく怒られた。
他の友だちもそうだった。

そのときはただ友だちと危険な遊びをしたこととか、友達を見捨てて帰ったことを責められたんだ、と思っていたが、爺さんが事情はまるっきり違う事を教えてくれた。

あの山には昔、この地方を治めていた城の出城があり、この地方が近くの有力な大名に呑み込まれる際に、まっさきに焼かれ落ちたところで、その跡地は今でも草木が生えないのだ、と伝わっているという事。

うちの爺さんはその供養でその山に時折入っては神酒をまいたりしているそうだ。
そんなところで花火やら戦の真似事をしていたら連れて行かれる者が出ても仕方が無い、と静かに言ったのだ。