先週中学時代からの友人Hにばったり会った。しかし、なんか話が噛みあわない。

「この前の同窓会は楽しかったよな」

と友人は言うのだが、俺はそんなものに参加した覚えはない。それどころか同窓会があったことさえ知らない。

しかしHは俺と昔話をしたし、4次会まで一緒に飲み明かしたと言い張る。

そこまで言い張るのなら、他の友人にも聞いてみよう、と言うことになり片っ端から中学時代の友人に電話をかけた。これでHも勘違いに気が付くだろう。そう思ったのだが…

信じがたいことに、電話をかけた友人たちは口を揃えて俺は同窓会に出席していたと証言した。そんなバカな。

大体その同窓会があったって日は、期初の処理に追われて遅くまで仕事だったんだ。参加できるわけがないだろう。

極めつけはHのケータイに保存された画像だ。そこには中学時代の友人たちと肩を組み、満面の笑みを浮かべる俺が確かに写っていた。

「なんならもう一回みんなに確認を取るか?」

明らかに狼狽する俺を気遣ったのかHが自分のケータイを俺に手渡す。

そこで強烈な違和感を覚えた。Hのケータイに俺の名前で登録されている番号とアドレスが、俺の物ではない。

H曰く、同窓会の日に番号とアドレスが変わったから、と俺(と思しき人物)が教えてくれたらしい。

気味が悪いやらわけが分からないやらで混乱しながらHと分かれた俺は、帰宅すると同時にケータイを手に取った。俺(と思しき人物)の番号に電話をするためだ。

数回のコール音を経て、応答があった。

『はい、○○(俺の苗字ね)ですけど』

自分の声を鼓膜から聞いたことはないが、ここまでの流れを考慮するにこれは俺の声なんだろうな。

「○○は俺だ」

意を決してそう言ってみる。相手からの反応はない。

「お前は誰なんだ?」

続けて聞いてみる。

『○○って言ってるでしょう? ホントに何度もしつこいようだと手段を考えないといけませんよね?』

急に早口でまくし立てられた。それも普通の早口ではなく、テープを倍速再生したような音声で、だ。