>>74

まあそんなこんなで三階に着いて自分がいた病室に行ってみたんだ。

ちょっと懐かしい感じがして、ちょっと寒いって言うのか寒気を感じた。
方向のある寒気って言い方もおかしいけど、そんな感じ。
そっちの方角にはね。体験談で話したトイレがあるんだ。

件のトイレには用事があった、というかそれが本命だったから俺はトイレの方に向かった。

そしたら変なんだ。
綺麗だった室内がそこに向かうにつれて汚くなってるというのか、物が地面に落ちてたり壊れてたり、そういう物が多く見かけるようになった。
壁のひび割れとかもそんな感じに増えていってるような気がした。
トイレの近くにはエレベーターがあったから、物の運び出しとかがあって他に比べて乱雑な感じになってるんだな、と俺はそう思うことにした。

トイレに入って手洗い場の割れた鏡を見る。
鏡には俺が映っているが、もちろん首元に手形のようなアザはない。
そのまま奥に進む。
右側には小便用のトイレ、左側には大便用の個室。それと真ん中に車椅子があった。

その車椅子見た時ね。恐くてすぐにトイレから逃げた。
フラッシュバックっていうのかな、あの看護婦さんもいたような気がしたんだ。

逃げたあとで思った。今は昼間。
トイレには光も結構入ってきてる。そこまで恐くない。
なにより、いた気がしただけでいなかった。車椅子だけだった。
そう自分に言い聞かせて、忍び足みたいにソロソロとトイレに戻ってみた。