75 無名さん
「お前を…抱きしめて、キスをして、抱いてしまいたいと思ってる…。
俺だけのものにしてしまいたいと…。
俺と名前は血も繋がりもなく、年齢も同じ…だけど家族だ。
駄目だと分かっていても俺は…お前を愛してしまったんだ!…だから…」

目を閉じ、軽く触れるだけのキス。
それ以上長く触れていると、押さえられなくなりそうで…。
名前は眉を潜め、目を見開き、俺を見た。

「お前を無理やり抱いたりはしない…俺は、お前の心を抱くよ。
もし、名前が俺を許してくれるというのならその時は……
お前を抱かせてくれ」

そう告げ、俺は名前の手を離して立ち上がり、背を向けた。

背中ごしの名前が、身体を起こすのが分かる。
急にこんなことを言われても反応に困るだろう。
フッ…我ながら愚かだな。

「イタチ…」

名前に名前を呼ばれ、顔だけ後ろを向くと、思わず驚いた。
名前の顔が、真っ赤だったからだ。

「そう遠くは、ないかも」

「え?」

「…クリスマス、雪、降ると良いわね」

ニコッと笑いかける名前を見て、俺は名前の方を向いてフッと笑った。

名前は"機敏な貴方なら分かるわよね?"と言い立ち上がり、俺に抱きついて笑った。

「…(貴方なら私の気持ち、悟ってくれると思ってたけど、案外そういうことには鈍感なのね…)」