>>75

恐かったんで、そっと覗きこむように車椅子のあった場所を見た。
たしかにそこには車椅子があった。
折り畳まれてたり横になって倒れてたり、そんなことにはなってなくて、誰かが座ってるように開いて足を乗せる部分もしっかり空けてあった。

俺以外誰もいない。
当たり前だけどそれを確認して、車椅子の置いてある場所まで俺は歩いて近づく……そこで俺はまた寒気を感じた。

トイレに車椅子ってだけでも場違いなのに、その車椅子が置かれていたのは俺が子供の頃に隠れた個室の前だったんだ。

車椅子の向きもおかしかった。個室の方に向いてたんだ。
トイレのところがどれだけ狭いか思い出して欲しい。普通車椅子を横に置くほどスペースはない。
縦ならわかるけど車椅子は横を向いて……個室を見るように置いてあった。

もしこれを人が置くとしたら、縦に車椅子を押してトイレに入ってその状態で車椅子だけを横に方向転換させるしかない。
これだと車椅子を持ち上げる必要がある。
だって車椅子を横におけるスペース自体はあっても、人が車椅子を持ってる状態で横に出来るスペースがないんだから。

車椅子をこのままにしておくと個室の扉が開けらなかった。
気持ち悪い気持ち悪いと思いつつも俺は車椅子を持ち上げてどかした。