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が、公演開始数時間前に出演者が次々に倒れてしまったのです。
喋る事はできるのですが、金縛りのようになって身体が動かないのです。

初日は昼と夜の2回公演だったのですが、昼の公演はやむなく中止。
初日で関係者の方が多かったので、昼と夜の部を一緒にしてもらう事にしました。

「とにかくお札を集めよう」

彼等は近くの神社やお寺をまわり、あらゆる種類のお札を持ってきて控え室に貼ってみました。
効果があったのでしょうか? なんとか夜の部の舞台を始める事ができました。

しかし、やはり公演中にも次々に怪奇現象が起こりました。
人形が涙を流し、居るはずない黒子がもう一人居たり、そして突然人形の右手が「ビシッ!」と吹き飛んだのです。
パニックになりそうになりながらも出演者達は演技を続けました。

人形を棺桶に入れるラストシーンをなんとかむかえる事ができました。
が、棺桶に人形を入れた途端に底が抜け、人形の首、腕、足が千切れてしまったのです。
ドライアイスを焚いたような謎の冷気をもった白い煙が舞台一面に広がり……夏だというのに信じられない冷気に開場がつつまれました。

「幽霊がこわいからって、途中で舞台を投げ出すわけには行かない」

稲川氏達は恐怖におののきながらも、決められた最終日までなんとか舞台公演を続けるのでした。
なんとか無事に全ての公演日数を終了できました。