新しい家はベランダが広く、中も西洋の雰囲気を醸し出しているとてもよい家でした。
ただひとつ、僕の部屋にある奇妙な扉を除いてはね。

僕の部屋のクローゼットのドアを開けて、更にその奥に小さいドアがあるんです。
たとえば電子レンジとか、旅館にある金庫あたりの小さいドアです。
取っ手の部分はザラザラに錆びていて、握っただけで手に錆がこびりつく。
気味が悪くて僕は開ける気にもなりませんでした。

父が気になるとはりきって開けようともしましたが、長い間誰も住んで居なかった家だったので扉が歪んでしまっていたり、錆のせいで腐食していたりしてどうしても開きませんでした。
それでも「業者を呼んで開けてもらう」と父は張り切っていました。

僕はそんな気味の悪い扉、開けなくてもいい。と思う反面、中に何が入っているのか分からない扉がある部屋で過ごさなければいけない。
僕の心は不安でいっぱいでした。

引っ越してきて二日がたったでしょうか。
ついに父が「明日、業者が来る。もしかしたら宝石でも入っているかもな」とニヤニヤした顔で僕に注げてきました。

明日になればこの不安も消える……。そう考えて僕はベットにもぐりました。
気味が悪いのでベットは部屋の隅に移動して、クローゼットから一番離れた位置にしていました。
もしも寝ているときに物音でも聞こえたら、嫌ですからね。