>>82

ギャリッ……ギャリッ……ガチャ

扉からの音が変わりました。

(ノブを、ノブを回してるんだ……! 大丈夫、大丈夫……あのドアは開くはずがないんだ、開くはずが)

ガチャガチャ……ガチャガチャ

ノブが何度も回って、僕はそれを見守ることしか出来ませんでした。
やがて音は更に不気味に大きさを増していきます。
まるでドアに体当たりしているような、ギシギシと扉が軋むのが分かりました。

ギッギッ……

……ギッギッ


僕は目を疑いました。
あれだけ父が力を込めても開かなかった扉が、少しずつ錆を落としながら開こうとしているのです。

「ひっ……!」

僕は情けない声を上げてクローゼットのドアを閉めました。
本当なら中の扉を閉めようとするべきでしたが、それは恐くて出来ません。
閉めた扉の向こうから、ギッギッギッと音がしばらく続き、

バァン!

扉が開いた音でした。
何かがあの小さな扉から出てくる。ゴキゴキと間接が鳴る音が聞こえました。

「あぁあぁあああああぁああぁぁ……」

この世のモノとは思えない声がクローゼットのドアをびりびりと震わせます。
寒気で体中の血が凍りつきます。

「お父さん! お父さん!!」

僕は泣きながら必死で扉をつかんでそれが出てこないように叫びます。