83 無名さん
銃を握る片腕が吹っ飛ぶ。宙を舞い、どさりと地面に落ちた。血の代わりにトリオンが勢いよく吹き出す。傷口を抑え、距離を取ろうとする。
「逃がすかよ。」
米屋の顔はそれは楽しそうで。私の心拍数は上がってしまう。
ドス、と今度は足を狙われる。たまらず後ろに倒れこむと、米屋は遠慮なく私を組み敷いた。
「っ、なあ、痛いか?」
ぐり、と足に刺さった槍を捩じられる。痛覚はOFFにしているが、肉の中を暴れられる感覚が気持ち悪い。
「はあ、これは? 痛えだろ?」
「っ、ぐっ!」
今度は下腹部に一撃を喰らう。トリオンが漏れ出すが、緊急脱出する程じゃない。米屋の顔は上気していて、まるでまぐわっているかのような感覚に陥る。
「い、痛い……痛いよ、」
「はっ、その顔最高。」
今度は片腕で首を締められる。窒息しない、ギリギリの力加減で、私は生かされている。
「かはっ、」
「なあ、あき、好きだ。」
愛の言葉を告げる口とは裏腹に、傷口は増やされていく。私が顔を歪めるその度に、米屋の興奮は高まるようで。
「ヤバイ、イキそー。」
米屋はうっとりとそんな事を言う。ああ、狂っている。狂っている顔が愛おしい。

『トリオン漏出過多、緊急脱出。』
どさり、と生身の身体に戻される。息は上がり、身体は熱を持っていた。
「なあ、あき、もう一戦、やろうぜ。」
画面の向こうから、大好きな声が聞こえる。言われるがままに、私は再戦を申し込んだ。