83 無名さん
「……ねェ総悟、何があったのトシ。大荒れじゃん」

明らかに土方が不機嫌だった為、代わりにテレビを見ながら菓子を食べている総悟に問いかけた。

「土方さん、柳生家の奴に負けたんですよ」

「負けた?トシが?」

「負けてねェ、剣にヒビが入っただけだ」

「……その割には不機嫌そうね」

土方の剣が割れる、又はヒビが入ることは滅多に無いため、名前は土方の隣に座ってから剣をジーッと眺めている。

「剣にヒビ入れる奴なんてこの世にあんまりいないと思うのだけどね」

「おめーもその一人だろ」

「失礼ね、ヒビなんて入れないわよ」

「あァそうだな、お前の場合はヒビどころか、みじん切りしたみたいにバラバラだろうな」

「…今日はえらく絡むわね、そんなに負けたことが悔しいの?」

「だから負けてねーって」

「この負けず嫌い」

「……名前な、アレだ。今日ヤらせろ」

「……何その下品な誘い方。
…侍なら、怒りは剣にぶつけるものじゃないの?」

「…稽古付き合ってくれるか」

「最初からそう言いなさいよ、憂さ晴らしは私の身体じゃなくて私の持つ剣でしてよね。
総悟〜木刀貸してー!」

「へーィ」

テレビを見ながら総悟は名前に棚に入っている木刀を投げた。それを華麗にキャッチした後、名前はニコッと土方に笑いかける。

「久しぶりに一手交えようじゃないの」