数年前の話になるんだけどさ。
俺がいつものように2chで遊んでたとき、電話がかかってきたんだよ。
うざいな〜と思いながらも俺以外家には誰もいなかったから仕方なく受話器をとったんだよ。

「……はい、もしもし」

今になってみるとかなり無愛想な声だったと思う。
そのせいかわかんないけど、しばらく何の反応もなかったんだ。
そのとき早く切りたかったんで、ちょっといらいらしてた。
俺はもう一度、さっきよりも大きな声で言った。

「もしもし!」

一瞬の間があったあと、受話器から小さくてか細い声が聞こえてきた。

「上の者です……」

女の子の声だったと思う。年齢的にも小さい子だろうって印象を受けたのを覚えてる。
そんな子が、上の者ですってのもおかしい話だけどさ。
でも俺はそれとは別のことでカチンときた。

俺は五階建てのマンションの最上階に住んでるんだ。つまりこれ以上は上に部屋なんてないんだよ。
加えて屋上もないマンションだったから、あるのは屋根だけなんだ。
正直これだけひぱって「間違い電話かよ!」って突っ込みたかった。
でも相手は年下の女の子だし、大人気ないなと思ってさ。できる限り優しくこう言ったんだ。

「多分かける番号間違えてると思うよ」

そしたらまた沈黙。
もうこれ以上付き合ってらんないと思って、俺は受話器を置いてPCに向き直った。
さあ仕切りなおしだってところでまた電話のベルが部屋に鳴り響いた。