9 無名さん
「花宮くんってよーく私のこと観察してるよね」

名無しは意味ありげにそう言った。

「なんでー?」

まの抜けた声はあざとさを演出する。大きな瞳は、幼い印象を与える。名無しは一見馬鹿な女に見える。けれど彼女は馬鹿なんかじゃない。そこら辺の成績の良い女よりも頭は良いはずだ。じゃなきゃこんな生き方は選べない。

「もしかして私のこと好きなのー?」
「ふはっ」

彼女はニヤニヤと笑っていた。そして俺も同じような笑みを浮かべていた。俺は彼女の言葉が冗談だとわかっていたし、彼女も俺がそう判断するとわかっていた。俺たちは同類だ。他人の不幸を喜び、他人を不幸にさせようとする人間。俺たちはたぶん誰よりもお互いをわかっている。

「んなワケねぇだろバァカ」

「俺はもっと馬鹿な女が好きなんだよ」俺はつづけて言った。俺たちは同類だ。けれど一生交じり合うことはないだろう。それが俺たちだ。

「お前って食虫植物みてぇだよな」
「えー!可愛くない!」


夢主は賢い設定好きだねBBAたん