9 無名さん
やたら蚊が飛んでいる。
帰宅して椅子に腰かけ一息ついて、見上げた天井には8匹止まっていたしまじかよと青くなった私の腕では既に悠々と鎮座した一匹の蚊が血を吸っていた。
蚊取り線香やベープの類はこの時期既に切らしているのでとにかく狭い部屋の中逃げ惑う蚊を追いまわす。
何でこんなことになったんだろう、無益な殺生はしたくないとかそんなんじゃなくて蚊とか蚊じゃないとか関係なく小さな蟻からきれいなちょうちょまで等しく触りたくない、なんか凄い嫌な気持ちになるから。
漸く仕留めた一匹は腹をぱんぱんに膨れさせるまで血を吸っていた。
私の血だ、考えただけで痒くなる、本当嫌だ。
絶望感に打ちひしがれながら壁や天井で羽を休める彼女らをぐるりと見渡した後、ふと違和感を持つ。

いつもならぴったりしまっている筈の窓が一枚、まるっと開いていた。
鮮やかなオレンジのカーテンがゆらゆらと揺らめき窓際は雨でビシャビシャ、蚊からすればこの悪天候の中迎え入れられていると言っても過言じゃない状況だろうに家へ入り込んだそばからパンパンパンパン手を叩いて追い回されたらたまったもんじゃないだろう。

そんなむごい事は出来ない、今私は諦めた。
吸えよ、いくらでも吸えばいいだろう、ほんでお前らありがとやんした〜とか言いながら唾吐きかけて出ていくんだろうだから痒くなんだろうがちくしょうクソだ人生なんてクソだ人生というものはすべからく輝いているんだよな〜とかこないだ書いたけどクソだったわ。
仕事もせず一日中布団にくるまって携帯ゲームとかしながら一生を過ごしたい欲求半端ない、それもこれも全部蚊のせいだ。
私がそもそも自宅警備員気質とかそんなんじゃなくて蚊のせいなんだって本当。

なんでコイツの日記いつも小説風なの