9 無名さん
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夢主ageがひどい

午後の授業も帰りのSHRも終わり、何人かが教室を去って行ったが、上鳴は自席に座って俯いたまま微動だにしない。周りの席の級友たちがどうしたのかと見守っていると、上鳴はダンッと両腕で机面を叩いた。
「っチョー可愛くね!? 苗字名前(女主)ちゃん!!」
 上鳴は机に顔を埋め、腹の底から湧き上がる気持ちを叫ぶ。机に向かって叫んでいる分声量は半減しているが、それでも周囲の注意を引くには十分だ。
「なになに? どしたん上鳴」
「それがさぁ! 普通科にすっげー可愛い子がいてさぁ! もうたまんねーの! すっげー可愛いの!」
「同じことしか言ってないぞ」
 上鳴の隣の席の芦戸三奈と、前の席の尾白猿夫が反応を示す。上鳴の左後ろの席の瀬呂が、身を乗り出して同意した。
「俺も見に行ったけど、まじで可愛かった。あんなに可愛い子初めて見た」
「え〜っ! マジで! そんなに?」
 私も見に行こっかな、と、芦戸は興味を示す。話題に反応した峰田が自席から駆け寄って来て力説した。
「しかも可愛いだけじゃねえ! スタイルまで抜群ときたもんだ! オイラはなんで一緒のクラスじゃないんだあ!!」
 大仰に絶望する峰田の背中をぽんぽんと叩いて、上鳴はちっちっちっと指を振る。
「いや、絶望すんのはまだ早いぜ、峰田。俺たちはもう名前(女主)ちゃんと知り合いだ。これからいくらでも交流する機会はある」
「! 上鳴……!」
「まずは飯にでも誘って、仲を深めてから……」
「オイラたち、苗字の連絡先知らなくねえか?」
「……」
 ヒーロー科と普通科じゃ時間割りも違うから時間も中々合わないしねえ、という芦戸の呟きが、上鳴と峰田に追い打ちをかける。2人はずーんと暗くなったが、いや、と上鳴は起死回生の煌めきを瞳に宿して顔を上げた。
「緑谷だ、緑谷がいる……! 緑谷に名前(女主)ちゃんの連絡先を聞けば……!」
「つーかそうだよ! なんであんな美少女と知り合いなんだよ、緑谷ァ!」