>>93

何だトイレに入っていたのか。
おかしな人だなと思いつつ、二人はすぐバックルームへと戻った。
しかしモニターを見て二人は初めてぞっとした。
さっきと全く変わらない立ち位置で女の人が本棚を見つめていたのだ。

早い、早すぎる。
トイレからそこへ向かうのとバックルームへ戻るのとでは明らかにこっちの方が早いはずなのだ。
しかもなんで同じ格好で本棚に向かってるんだ? もしかしてモニターの故障では?
二人は顔を見合わせ頷きあって、もう一度バックルームから挟み撃ちの隊形で本棚へと向かった。

すると、また女の人はいない。
冷や汗がにじむのを感じながら、今度は何も言わずに二人はバックルームへと戻った。
無言で、しかし真っ先にモニターを確認する。

「あ、いなくなってるぞ……」 

先輩が呟いた通りモニターからは女の人の姿は消えていた。
後輩の心中にほっとしたものが広がる。よく確認しようと先輩の横に顔を乗り出したその時、

「待て、動くな」 

先輩が突如、押し殺した声を出した。
は? と思ったが反射的に従う。
二人、モニターを覗き込んだ格好のまま固まっている。

「いいか、絶対に今振り向くなよ」

やはり先輩が押し殺した声で言った。
何でだろうと思った後輩だが、モニターをじっと見てそれを理解した。