94 無名さん
私は不幸だ。

産まれてすぐ母は死んだ。元々体が弱かったのに、無理して私を産んだからだ。そのせいで父は私を恨んでいた。人殺しと、私の顔に熱湯をかけてきたのは小学校三年生の時。顔の左側に大きな火傷跡ができ、それと同時に左目は失明した。鏡を覗き込むと、この世の生き物とは思えない醜い顔と目が合う。生きるのが苦しかった。外を歩くのが辛かった。少しでも周りの目を誤魔化そうと、前髪を長く長く伸ばした。その隙間からちらつく左目にはもう一生光は灯らない。力を無くしたように、ぼんやりと白かった。この頃から、私はクラスメートを含む同じ学校の人にも疎まれるようになった。父が死んだのは私が小学校五年生の時だ。交通事故だった。小学校五年生で天涯孤独になった。引き取ってくれる親戚もなく、私は両親が残したマンションで一人暮らしを始めた。父が入ってた保険のおかげで、お金にはそんなに困らなかった。でも孤独だった。私は孤独で、不幸だった。

昔から継続して行われていた虐めがひどくなったのは中学三年の頃だ。エスカレーター式ではない私の学校では、受験を控えてる生徒がほとんどだ。おかげで周りの雰囲気は暗い陰険なものになっていく。それがそのまんま私に向かった。私は皆のストレスの捌け口だった。物が無くなる。無視される。悪口を言われる。暴力を振るわれる。服を脱がされる。恥ずかしい写真を撮られる。ぐるぐると回る虐めの数々。もう充分だと思っても、相手は飽きることを知らない。そんな悪循環から、私を助け出してくれた人がいた。彼の名前は白石蔵ノ介。容姿端麗文武両道なんでもこなせる人気者。私とは何もかも真逆な彼は、何故だか私を助けてくれた。男子なんて、見てみぬふり、もしくは遠慮なく殴ってくるだけだったのに。なのに彼は私の前に立ちふさがり、私をいじめていた者たちに言った。


悲劇のヒロイン設定もやたらと多いよね