97 無名さん
第3話「始動」
どこの世界にも、悪い事を企む奴はいるんだなぁ…。
心底、オレはそう思った。
それと同時に、ロケット団についてもっと詳しく聞きたいとも思う。
弟も同じだったらしく、アルはサクラに質問した。
「サクラはロケット団について、何か知ってる?」
「…………。」
「…ねぇ、サクラ聞いてる」
ダンッ!!!!
「「Σ!?」」
オレ達は目を見張った。
何故ならサクラが、両拳で思い切りテーブルを叩いたからだ。
…サクラの肩が、僅かに震えている…。
それが怒りからなのか…、悲しみからなのか…。
オレには分からなかった。
でもロケット団に関わる何かから、サクラが今、感情的になっているのは理解できた。
テーブルを叩いた弾みによって、山積みにされていた食器がグラリと揺れる。
その端に置かれてあった調味料の容器も、いくつか音を立てて倒れてしまった。
「…ゴメン。その話は…、したくないんだ…。」
そう言って、サクラは握った拳にいっそう力を入れる。
…拳も、震えていた…。
「…何か、嫌なことでもあったのか?」
オレは質問しながら、下を向いてしまったサクラの表情を窺う。
しかし母さんに似た栗色の前髪が邪魔して、オレからはよく見えなかった。
「言いたくない」…。
そう、訴えるかのように…。
しばらくすると、サクラは脱いだ帽子を握り締めながら立ち上がった。
そして飲みかけのココアをそのままに、サクラは脇の廊下へ足を踏み入れた。
「おい!どうしたんだよ!?」
踏み出したサクラの足が、一瞬だけ止まる。
「先に部屋、戻ってる…。」
「…サクラ?」
オレ達に目を合わせないまま言うと、サクラは廊下を歩き始めてしまった。
…どんどん遠くなっていくあいつ…。
その足取りは、なんとなく速い。
サクラがレストランの出入口から出ると、その影はゆっくりと姿を消してしまうのだった…。

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サクラたん生理なの?