今回は、まぁ、私の身近で実際にあったことをお話させていただきます。
この話にはオチも何もないですが、個人的に恐怖を覚えた話。体験したのは、私の母。

いつも夕方の5時くらいに、母は仕事から帰って来ます。その日もそうでした。
母は帰って来るなり「聞いて聞いて!」と、興奮気味に私に話し掛けるので、「何?」と、バラエティーなんか見ながら、適当に相槌でも打つか、と、返事をしました。

以下、母から聞いたこと。

母は仕事で、車で商品配達をしていました。大きなデパートの前にある信号に差し掛かり、赤信号になったので車を停め、何となく辺りを見回していました。
その道路や歩道は、普段から車の通りも人通りも多く、その日はデパートで何かのイベントがあったこともあり、特に多かったようです。

そしてそんな中、母は行き交う人々の中に異質を見ました。母の目は、それに釘付けになったそうです。

それはまるで、悪魔がそのままそこに居るような。赤黒い、血濡れたような肌の色。真っ赤に充血した目。
服はいたって普通で、ワイシャツにジーパンといったラフな格好。口は異常にニヤけていたらしい。

それを見た瞬間、母は「あれは見ちゃいけないものだ」と直感したそうです。
ゆっくりゆっくり視線を前に戻したころにはもう信号は青になっていて、急いで車を発射させました。

不思議だったのは、そんな明らかに異質な人がいながら、周囲は誰もそれを気に留めることなく歩き去っていたこと。
車の中にいる人も、母が見る限りは誰もそれに気付いていないようでした。

もしかして、あれは私以外に見えていなかったのでは、と、母は後々思ったそうです。
そして、それは充血した目で誰かを見て、ニヤけていたようだと言っていました。

見られていたのが私じゃなくて良かった、母はふぅ、と、息を付きました。
その視線を向けられていた人がどうなったかは知りませんが、まぁ、ロクな目にあっていないのは確かかと。