29 無名さん
「なぁ…庄」
「なんですか?」
「お前は、ヒーローを___いや、オールマイトのことをどう思う?」

一気に飛んだ話に、庄左衛門は疑問符を浮かべるしかない。けれど由紀ははなから反応など求めていなかったのか、笑っていながらその眼はここではない。あのヒーローの背中を見ていた。

「私はアレが恐ろしいよ」

攻撃を受けようとも、肉体が限界に来ようとも。決して戦いをやめない。

「あの人は他人を守るために、それだけのためにあそこまでやるんだ」

笑って敵を討ち滅ぼす彼は明らかに限界なのに、それなのに、周りは気が付かない。彼が気が付かせない。

「なんの見返りも求めず、ただ助ける」

その笑みの下はもうボロボロのはずなのに、それでも周りは彼を担ぎあげる。

「異常だよ。彼も。周りも。ヒーローがあんなものなら、私は死んでもゴメンだ」


あんなもの、平和の奴隷じゃないか。

早く夢主を不敬罪でタルタロスにブチ込んで