69 無名さん
おらよ

コンコン

今は夕食を終え、午後11時を回った頃。
リンは隣の部屋に通じるドアをノックする。
罰則に付き合うだとか、そういう事が無い限りは8時迄が教職員の勤務時間だ。
リンは手の中にある包みを握りしめて返事を待つ。

「入れ」

包みの中身より余っ程甘い、ミルクチョコレートヴォイスが響いた。
リンが中に入ると丁度バスルームから出て来たらしいスネイプがそこに居た。
ゆったりとしたグレーのボトムに、上半身はシャツを羽織っただけ。
髪はまだ濡れていて、肩に引っ掛けたタオルで雑に拭いながらこちらへとやってくる。
リンは色気たっぷりなスネイプから少し目を逸らして、なんとか赤面する事を抑えた。

「ちゃんと拭かないと風邪引きますよ」
「勤務時間外だ…敬語はやめろ」

渋面を作るスネイプは、リンをソファーへとエスコートする。
何度も言うようだが、紳士というよりも女性慣れというのではないだろうか。
当たり前のように隣に腰掛けるスネイプのタオルをそっと奪うと、リンは後ろへ回って丁寧に髪を拭いていく。
視界に入ったデスクには、レポートの山があり、リンは苦笑いしてしまった。