83 無名さん
リンが丁寧に礼をして挨拶すると、皆快く見送った。トンクスはまだまだ話足りなそうにしていたが。

エントランスを出ると、外でスネイプが腕組みをして待っていた。
眉間の皺が3割増なのは気のせいではなかろう。

「待たせちゃったね」
「構わん。どうせブラックあたりが駄々をこねたのであろう」

そういいながらスネイプはリンを抱き寄せた。
たったそれだけの事で独占欲に火をつけるのだから、己の恋人は罪作りだと思う。
と、同時に、それだけ人を引きつける魅力の持ち主であると鼻も高い。
複雑な心境ながらも、今からは自分だけが独占出来るのだからまあ良しとしよう。

「どうしたの??」
「いや…気にするな」

一瞬自分の心でも読まれたかとスネイプは驚いたが、みだりに開心術を使うようなことはまずないと首を振る。
不意に目に入った銀色の指輪にふっと一瞬だけ口角を上げると、リンを更に強く抱いた。
こんな落ち着かない場所に長居は無用だ。
さっさとホグワーツに、二人だけの場所に帰ってしまおう。

「掴まっていろ。戻る」
「ん。お願いします」

バチン!!
次の瞬間、破裂音を残してそこには人影も何も跡形も無くなっていた。