1 無名さん

魔法晒し31

「斯様に噛めば切れてしまうぞ。おまえも素直じゃないな」
「それも、お互い様……だろ……んっ」
「あぁ、こら、脚を閉じるな。もっとよく見せろ」
「くそっ、じじいのくせに大人気ないぞみかっ、あっ、んぁあっ……!」

ゆるゆるとした攻め手に油断してまくし立てたところで、焦らし続けた一番悦い所を抉ってやると、鶴丸は堪えることも出来ずにあられもない声をあげ、触れられず熱を吐き出す事もできなかった魔羅から僅かに白濁を零し、腹を汚した。
突然与えられた刺激と波のように押し寄せる悦楽に身体を震わせる鶴丸の耳許に三日月は吐息がかかるほどに唇を寄せた。

「ほら、何も難しい事を言わずともよい」

人の身体に慣れたとはいえその裡で未だ飼い慣らす事の出来ぬ灼けるような熱を吐き出す事も鎮めることもかなわず、理性と本能の境で揺らぐ鶴丸の耳元で、とびきり甘い声でそう囁いてやると、意地を張っていた鶴丸もとうとう陥落した。


「月が、欲しい」
「月を得て、どうしたい」
「……飛びたい。はやく、はやく……」

鶴丸が白い腕を三日月の首に絡めそう強請ると、三日月は満足げに笑みをこぼした。

「まっこと、愛い奴じゃな」

冷たい三日月の指がずる、と引き抜かれると、其処を埋めるものを求めて薄く綻ぶ蕾に先程とは比べ物にならぬ熱が宛てがわれる。
充分過ぎるほど時間をかけて慣らしたそこはすんなりとその熱を受け入れる。
冷たい三日月の指がずる、と引き抜かれると、其処を埋めるものを求めて薄く綻ぶ蕾に先程とは比べ物にならぬ熱が宛てがわれる。
充分過ぎるほど時間をかけて慣らしたそこはすんなりとその熱を受け入れる。

「刀が鞘になるとは驚きだな」
「じいさん、助平な冗談はもう少し粋に言うもんだぜ」

美しい貌でさらりと無粋な喩を口にする三日月の下で鶴丸が眉を顰めた。

「すまんな、お前があんまり素直に受け入れるものだから」
「誰の所為……んっ、あ、待てっ、急にうごく、なっ」

「待てぬ」


鶴丸はこの食えない爺に焦らされていると思っていたが、それは三日月とて同じ事だった。


まったく、自分がこんなにも欲深い生き物に成り果てるとは思いもしなかった。

縁の深い者に慕情を抱き、初めこそ穏やかであったその愛情も時と共に人という器に馴染む程にどろどろと形を変え、時に愛欲に塗れ、こうして獣のようにまぐわう様になってしまった。


「あぁ、よきかな。鶴や、もっと鳴いてみせろ」

肉を穿つ度に、鶴の白い喉は鳴き声をあげ、甘く三日月の耳をくすぐった。

「ああぁっ……!や、いやだ、それ、あぁっ」
「嫌か、なら仕方ないのう」
「あっ、ちがっ、ちがうっ!」

試すように腰を引くと、鶴丸は脚を三日月の腰に絡め、繋がった其処も離すまいと締め付ける。
そのさまがなんとも厭らしく、いじらしい。
冷たい三日月の指がずる、と引き抜かれると、其処を埋めるものを求めて薄く綻ぶ蕾に先程とは比べ物にならぬ熱が宛てがわれる。
充分過ぎるほど時間をかけて慣らしたそこはすんなりとその熱を受け入れる。

「刀が鞘になるとは驚きだな」
「じいさん、助平な冗談はもう少し粋に言うもんだぜ」

美しい貌でさらりと無粋な喩を口にする三日月の下で鶴丸が眉を顰めた。

「すまんな、お前があんまり素直に受け入れるものだから」
「誰の所為……んっ、あ、待てっ、急にうごく、なっ」

「待てぬ」


鶴丸はこの食えない爺に焦らされていると思っていたが、それは三日月とて同じ事だった。


まったく、自分がこんなにも欲深い生き物に成り果てるとは思いもしなかった。

縁の深い者に慕情を抱き、初めこそ穏やかであったその愛情も時と共に人という器に馴染む程にどろどろと形を変え、時に愛欲に塗れ、こうして獣のようにまぐわう様になってしまった。


「あぁ、よきかな。鶴や、もっと鳴いてみせろ」

肉を穿つ度に、鶴の白い喉は鳴き声をあげ、甘く三日月の耳をくすぐった。

「ああぁっ……!や、いやだ、それ、あぁっ」
「嫌か、なら仕方ないのう」
「あっ、ちがっ、ちがうっ!」

試すように腰を引くと、鶴丸は脚を三日月の腰に絡め、繋がった其処も離すまいと締め付ける。
そのさまがなんとも厭らしく、いじらしい。
「戦場でも美しいが、閨でもほんに愛らしいな、鶴よ」

「は………っ、ああっ……」

鶴丸とて本意ではなかった。
はじめは戯れのつもりだった。人間のように色恋の真似事をしてみるのも、一興であると。
もとより長い人生…いや刃生だ、一度や二度くらいなら抱かれてみるのも悪くはないと。

ところがその一度二度の交わりが己の理性の箍を外し、仮にも男の身体を与えられているのに、その快楽
けらく
に溺れ、乱れ、果ては三日月に女にして呉れと強請る様になってしまった。酔狂にも程がある。

月は人を惑わせるとは、よく云うたものだ。三日月はまこと月そのものだ。甘美な毒のように自分を狂わせる。

「日が昇れば、元に戻るだろうか」

互いに熱を吐き出し、手足を絡ませたままくたりと横になった床の中で、鶴丸がそう独りごちた。

「なんの話だ」
「こっちの話だ。……それより寒くて仕方ねえな」
「雪の所為だな。ほら、もっと近う寄れ」

ずっと肌を晒していて冷えきった鶴丸の身体に三日月の体温がじわりと染み渡る。
「子供みたいだな。けど、悪くない」


人の姿を得て初めて理解したそのぬくもりに身を任せ、二人は目を閉じた。