1 無名さん

FGO

2 無名さん
いちおつ
3 無名さん
いちおつしろ!
4 無名さん
勝手に立てるな新参
5 無名さん
アテクシが立てたスレにいちおつしろー!
6 無名さん
ふざけんなクソが
7 無名さん
立てたなら物件はよ
流行ってるし痛いのあるといいね
8 無名さん
支部のが痛すぎるよ
9 無名さん
物件はよ
10 無名さん
物件はよ
11 無名さん
最近新参増えすぎ
12 無名さん
新参!新参!
13 無名さん
新参増えたな
14 無名さん
はよ
15 無名さん
あくしろ
16 無名さん
いちおつしないから貼らない
17 無名さん
バーカバーカ
18 無名さん
アホ
19 無名さん
新参!新参!
1: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/23(日) 01:35:42.19 ID:01V05yZ10
僕の名前は岸辺露伴。週間少年ジャンプで『ピンク・ダークの少年』っていう漫画を連載している漫画家だ。 

突然だが、君たちは『夢』をよく見るだろうか。ああ、夢といっても寝ているときに見るほうだが。 

楽しい夢、怖い夢、人には言えないような夢。色々とあるだろう。 
今回はつい最近僕が体験したある『夢』の話をしようかと思う。 

……おいおいおい、確かに『他人の夢の話はつまらない』って、相場では決まってる。誰が好き好んでそんな話を聞きたがるかってね。僕だってごめんさ。 

でも、今回の話は僕が本当に体験した話だ。『リアリティ』なら、保証するぜ? 
2: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/23(日) 01:37:42.98 ID:01V05yZ10
漫画家ってのは『締め切りに追われて寝不足だ』みたいに思われがちだ。確かにそんな作家もいる事だろう。だが、本当のプロフェッショナルっていうのは自分の体調だってしっかり管理しなくちゃぁいけない。『会社の為に仕事をし続け、過労で死にました』なんて社会人としてどうなんだ? と僕は思うね。 

おっと。少しきつい言い方になってしまった。すまない。別に僕だって仕事を一生懸命してる人を悪く言うつもりはない。そういう人には好感は持てるからね。 

ただ、他人の名前を間違える奴。こういうのは礼儀がなってないというか、『敬意』が感じられないな。ん? いや、単なる独り言さ。 

話が逸れた。とにかく、その日僕はその週に提出する原稿を書き終えていつも通り定時に眠った。はずだったのだ…… 
3: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/23(日) 01:38:38.34 ID:01V05yZ10
『目を開ける』と僕は無人駅にいた。 

小さいレールとベンチの他にめぼしい物はなく、駅名が書かれていたであろう看板は掠れて読めなくなっている。 

本来なら眠っているはずだが……きっと、これは夢なのだろう。それも自分が夢を見ていると認識できている。俗に言う『明晰夢』って奴だ。 

確か、明晰夢では比較的自由に動き回れるらしい。試しにストレッチや準備体操をしてみるが全く問題はない。 

服は普段着に戻っているが、ペンやスケッチブックなんかは無い。せっかくだからスケッチしたかったのだがこればかりは仕方が無い。できる限り鮮明に覚えておこう。 

そういえば、スタンドも出せない。夢の中では出そうとした事もなかったが、よく考えてみると不思議だ。スタンドというものは精神の像のはずだ。自分の頭の中でくらい訳ないと思うのだが。 
4: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/23(日) 01:39:35.63 ID:01V05yZ10
さて、そんな風に僕が体を動かしていると、錆まみれのスピーカーからこれまたひび割れた声が鳴り出す。 

『ま、間も無く電車が参りま゛ぁ〜す』 

『その電車にお゛乗りになりますとーー。あ、あなたは恐ろしい目にあ゛いますよぉー』 

恐ろしい目? 

ふんっ。悪いけど、僕はこれまでいろんな経験をしてきた。それこそ命の危険があったことや死を覚悟したことだってある。そんなチンケな警告に怯えるはずが無いのだ。 

むしろ、そんな挑戦的な台詞に興味が出てきた。『怖いもの見たさ』とも言うが、ここで引いたら岸辺露伴の名が廃る。これでちゃっちい仕掛けだったら大爆笑してやろう。 

そもそも、ここは夢の中――つまり僕の脳が作り出しているに過ぎない。もし、危険を感じた時には飛び起きればいいんだ。まぁ、そうなったらしゃくだけどね。 
5: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/23(日) 01:40:38.38 ID:01V05yZ10
そんなわけで、ベンチに座って待っているとレールの片方からチンチーンという音が聞こえてくる。どうやら来たようだ。 

電車、というから僕はてっきりいつも乗っているような大きな物だと思っていたが、やってきたのは全くの別物だった。 

それはまるで遊園地にあるような、いわば『おさるの電車』だった。子供が乗るような小さな箱型の車両がいくつかと、一番先頭には煙突のついた車両が猿を乗せて走ってくる。 

乗客は2人、前詰めて乗っている男女だけだ。どちらも品のいいスーツを着ているが表情が全く無い。不気味なモンだ。僕は3両目に乗る事にした。というかそこしか空いていなかったのだ。 

前方の猿がこちらを振り向き、帽子を下げて会釈をした。確認の合図だろうか。こちらも頷いて返してみると、そいつは前を向いてすぐ脇にあるボタンを押した。 

ポッポーと汽車のような音を出して、電車がゴトゴトとレールを進み始める。思っていたより座り心地はいいが、バランスを取るのがなかなか難しい。 
6: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/23(日) 01:44:37.50 ID:01V05yZ10
しばらくすると電車はトンネルの中に入っていく。中は薄暗く、湿っぽい。近くの壁に手を触れるとひんやりとしていて、苔なのだろうか、ヌメリとした感触がする。 

目が慣れてくるとトンネルの壁になにやら絵が描かれているのがわかる。目を凝らして見てみると、どうも僕の漫画のキャラのようだ。真っ二つになった奴、全身の血を抜かれ干からびた奴、そんな名もないヤラレ役ばかりが描かれていた。 

僕の夢だから文句も言えないが、どうしてこんなのを見ているのだろうか。不思議なもんだ。 
7: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/23(日) 01:45:18.42 ID:01V05yZ10
トンネルの壁の絵を眺めていると、天井の方から先ほどと同じように音声が流れてきた。 

『つ、次はーー、活け造りィーー……活け造りィーー…………』 

イケズクリ? 変わった名前だが、次に停まる駅の事だろう。しかし、この夢はどこまで続くのだろうか。 

電車の揺れが少し大きくなってきた。前方の男の影が動いているが、薄暗いうえに間にもう一人いるので、確認できない。 

ふと、空気がよどむというか。変な匂いが漂ってきた。鉄っぽい感じだ。電車がきしむ音も大きくなる。鉄製でガタがきているのかもしれない。 

特に変わったことは今のところない。暇なのでまた壁の絵に戻る。 
8: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/23(日) 01:46:22.64 ID:01V05yZ10
しばらくすると、揺れも小さくなり音も静かになった。前方にはトンネルの終わりを告げる小さな光が見えてくる。思ったよりも長かった気がする。 

キキーーという音を立てて電車は駅に着く。駅名は先程と同様何も書かれていない。放送は一体何だったのだろうか? 

『ほ、本日の運行はぁーー……ここまでとなりますーー』 

一番前に座っていた猿が駅に降り立ち、帽子を外して一礼する。ここで降りろってことか。 

特に恐ろしいことなんて起こらなかったが……まぁ、類人猿恐怖症の奴が載っていたら『恐ろしい目』だったろうが。 
10: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/23(日) 01:47:29.71 ID:01V05yZ10
僕が呆れていると、目の前の女性が駅のホームに降りる。自分もそれに習う。いつまでもここにいる意味なんてないからね。すると、視界の端で何かが見えた。 


『それ』は二つ前の男性の席にあった。『それ』はまだ新鮮らしくビクビクと痙攣していた。『それ』と目が合ったかのような錯覚を感じる。 


11: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/23(日) 01:48:21.41 ID:01V05yZ10
『それ』は……綺麗なピンク色したものは『男性の活き造り』だった。 
29 無名さん
新参!新参!
12: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/23(日) 01:50:22.73 ID:01V05yZ10
「………………全く。朝っぱらからなんて夢を見るんだ」 

その日は前日に原稿を書き上げ、特にやることがない日だ。大抵は取材に行ったり、康一くんなんかと駄弁りに行くのだが、朝から悪夢とはついてない。 

とりあえず、汗でベタベタになった寝巻きを着替え、朝食の準備をする。そのうち気も紛れるだろう。 

パンを焼いている間に新聞を取りに行く。最近はテレビやネットでニュースを見るなんて若者も多いと聞く。別にそれが悪いとは思わないが、活字を読む癖はつけるべきだと思う。 

一面には国会での騒ぎが書かれている。アホらしい。国のトップがこれでどうするんだ。次の面にもその話題が続く。 

ふと、下の方に書かれている亡くなった方々の記事を見る。特になんてことはない。いつもと同じような記事だ…………そのはずだった。 


『○○党 ××議員 本日午前2:00 急性心筋梗塞にて死亡か』 


そこには夢の中で見た男の顔が載っていた。 


〜〜1夜目終了〜〜 
20: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/24(月) 00:06:18.41 ID:47N3qa6A0
ガタンゴトンと猿の電車は僕を乗せて進んでいく。やはりまたこの夢か…… 

新聞の記事を読んだ後、僕はそのことについて簡単な取材を行った。その死が確かに病死なのか、生前変なことを言っていなかったか、などだ。 

結果的に本当に病死だった。それは疑いようもないものだ。しかし、睨んだ通り『奇妙な夢を見ていた』という噂がある。詳しい内容はわからなかったが、猿が関係しているらしい。おおかた彼もこの夢を見ていたのだろう。 

これらからするに、この夢の中で殺された場合、現実世界においても死ぬかもしれないということだ。もちろんこれは憶測でしか無いが、十中八九当たっているだろう。新手のスタンド使いか、そういった『現象』なのかは知らないが、やれやれ、厄介なものだ。 

昨日の夢で言っていた『恐ろしい事』というのはこの事だろう。だが、生憎そうやすやすと殺されつもりなんて微塵もない。 
21: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/24(月) 00:07:03.26 ID:47N3qa6A0
とりあえず、現状を確認してみる。僕は今、前から二つ目の席に座っている。昨日の席の一つ前だ。目の前には昨日と同じ女性がいる。その前は一番先頭で猿が運転手を務めている。どうやら昨日死んだ男の分、僕とこの女が前にずれたようだ。 

「なぁ……おい。君はいつからここにいるんだ? …………反応は無し、か……」 

前の女に声をかけるが返事は無い。聴こえてないようだ。 

スタンドは…………やはり出せない。感覚としてだが、この空間にいないような気がする。 

同じように、服装も昨日と同じ服だ。特に武器になりそうなものは無い。 
33 無名さん
22: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/24(月) 00:08:06.39 ID:47N3qa6A0
しばらくすると、無名の駅に着いた。そこには男が一人立っていて、電車が止まると僕の後ろに乗ってくる。どうやら、昨日の僕と同じ状況らしい。 

このまま駅に降りれないだろうか? 試してみるが、足が全く動かない。上半身は辛うじて動くが、電車を降りることはできないらしい。 

「なぁ、君の名前を……って無理か」 

振り向いて乗ってきた男に話しかけてみるが、目は虚ろに宙を舞い、こちらと会話することはできなさそうだ。 

前方の女性といい、どうして僕以外は意識を持っていないのだろうか。もしかして、スタンドと関係があるのかも…… 

こんなことなら仗助や億泰が引き込まれれば良かったのに。あいつらがいれば話し相手ぐらいにはなっただろう。康一くんは……こういうの苦手だろうしなぁ…… 
35 無名さん
23: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/24(月) 00:08:38.34 ID:47N3qa6A0
ポッポーとやはり汽車のような音が鳴り響き、電車が動き出す。しばらくして、やはり昨日と同じようにトンネルの中へ入っていく。 

トンネルの中では変わらず漫画の残虐なシーンが映し出されている。この内容は人によって変わるのだろうか。 


24: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/24(月) 00:10:41.21 ID:47N3qa6A0
『次はぁーー挽肉ぅーー、ひ、挽肉ぅーーーー』 

挽肉? ……嫌な予感がする。昨日の場合駅名が活け造りで、まさに男はそのようにされていた。つまり……今度は…… 

ウイィィィーーーーーーーーンッ 

突然、歯医者でよく聞くような音が前の方から鳴り響く。目を凝らしてよく見ると、小さな子猿達がドリルのようなものを持って女性に襲いかかろうとしている。 

「クソっ! 」 

腕を伸ばそうとするが、何かに縛り付けられたように身体が動かない。先ほどの駅の時と同様、「夢」が誰かに干渉している際は他の人間は動けないのかもしれない。 
37 無名さん
25: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/24(月) 00:11:15.71 ID:47N3qa6A0
「あ…あぁ…ぅあ……」 

自分の身体が動かなくなるのとは正反対に、目の前の女性の意識が戻っていく。両腕は小猿に押さえつけているが、目を見開きドリルから顔を遠ざけようと必死になっている。 

「い、いや……そんなの……やだ…やめて……」 

『ウキキッ♪』 

『ウキキキ』 

『ウッキャアー!』 

ガガガガガガガガガガガガガーーーッ!! 

「あああ゛あ゛あ゛ぁぁあああ゛あぁあああ゛ああぁーーーーーーッ!!!!!」 


26: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/24(月) 00:11:46.37 ID:47N3qa6A0
目の前が紅に染まる。 

女性の顔面にドリルが突き刺さる。皮膚がちぎれ、頭蓋骨が砕ける音とともに彼女の悲鳴がコーラスのようにトンネル内に響く。 

両腕を振り上げ痙攣していく彼女の動きに、電車は激しい軋み音を上げながら左右に揺れ動いた。 

「あ……あ゛ぁ…ぁ…………」 

そして彼女は顔の右半分に幾つかの穴を開けながら絶命した。 
27: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/24(月) 00:12:24.63 ID:47N3qa6A0
『ウッキャァ! ウキキッ!』 

小猿たちは何が楽しいのか女性だったものにさらにドリルを突き立て、グジャグジャに破壊していく。目が、舌が、鼻が、脳が、だんだんと崩れていきミンチ状になっていく。 

あたり一面に濃い鉄の匂いが漂い、喉元まで胃の中身が逆流してくる。 

とっさに口を抑えて吐き気を我慢する。流石の僕でもこんな状況に平然としていられるほど経験があるわけではない。 


28: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/24(月) 00:12:54.62 ID:47N3qa6A0
しばらくその地獄のような眺めを見続ける。たとえ今手を伸ばしたところで同じようにミンチになるだけだろう。 

後ろを振り返るが、やはり反応がない。初日もそうだったように、この暗いトンネルの中では奥の車両でなにが起こっているかなんてわからないようだ。 

小猿たちは仕事が終わったのか女性だった肉片を集め皿に盛り付ける。血みどろだった座席を綺麗に吹くといつの間にか姿を消していた。 
40 無名さん
29: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/24(月) 00:13:48.62 ID:47N3qa6A0
トンネルを抜けると、昨日と同じように無人駅についた。駅名にはなにも書かれていない。 

『ほ、本日の運行はぁーー……ここまでとなりますーー』 

キキーと大きな音を立てて電車がとまる。ゆらゆらと足元をおぼつかせながら僕はホームに降り立つ。後ろの人や運転手の猿も降り立った。 

一番前の車両に置かれている肉片をもう一度見る。もし、対抗策を見つけなければ……僕もああなるのか…… 


30: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/24(月) 00:14:37.78 ID:47N3qa6A0
『明日ハ……アナタノ番……デスネェ』 

耳元で奇怪な声がする。急いで振り返ると、猿が気味の悪いニタニタ顏で話しかける。 

『マタノゴ利用ヲ、オ待チシテオリマスゥ…………』 

そこで僕の意識は途絶えた…… 
42 無名さん
43 無名さん
31: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/24(月) 00:16:23.80 ID:47N3qa6A0
「あのエテ公……舐めやがって!」 

僕は冷や汗をベッタリとかいて布団の中きら飛び起きる。 

何がまたのご利用をお待ちしておりますだ。人間を馬鹿にするのもいい加減にしろ。 

「この岸辺露伴を狙ったことを、後悔させてやる!」 

決戦は今日の夜。夢の中で、だ。 


〜〜2夜目終了〜〜 
45 無名さん
46 無名さん
42: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/25(火) 00:21:13.28 ID:pk2yigI50
夢の中で目がさめる。三度目となれば流石に落ち着いている。手を動かし、自分の仮説が正しいことに満足したのち、周りを見渡してみる。 

やはりというか、思った通り僕は一番前の車両。運転手の猿の真後ろに座っている。 

後ろを振り返ると昨日乗ってきた男がいる。全く、彼も運がいい。今日でこのおさるの電車は『廃線』だからだ。 

いつものように、無人駅に着きそこにいた女の子が電車に乗る。今度は中学生くらいの女の子だ。こちらから声をかけてみるが返事はない。 

しばらくしてトンネルに入る。もう周りを見渡すつもりもない。後はあの放送を待つだけだ。 


43: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/25(火) 00:21:58.07 ID:pk2yigI50
『次はぁーー抉り出しぃーー、え゛、抉り出しぃーーーー』 

「きたか……」 

あいも変わらず、気持ちの悪い放送がスピーカーから流れてくる。 

活き造り、挽肉ときて、今回は抉り出しか。一体何を抉るのだろうか。 

そんな興味のないことを考えながら、僕はもう一度手を動かす。大丈夫。ちゃんと動いてくれる。 
48 無名さん
44: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/25(火) 00:22:51.97 ID:pk2yigI50
ガタンゴトンという電車の揺れとは別に何者かが乗ってくるような揺れを感じる。暗闇に慣れてきた目が、昨日同様小猿たちの姿を捉える。 

その手には大きなギザギザのスプーン――アイスを食べる時に使うようなものが握られている。 

そのうちの一体が僕の体の上にまたがってくる。どうやらこのスプーンで僕の目玉を抉り出そうというらしい。 

小猿のニタニタした顔が目の前に迫る。気色悪い息がかかってしょうがないが、ここまで来てくれたのは好都合だ。もう後悔しても遅い。 


45: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/25(火) 00:23:49.75 ID:pk2yigI50
「『ヘブンズ・ドアー』!」 

僕の叫び声とともに、白っぽいマントとシルクハットをかぶった機械のような少年が現れる。彼が小猿に触れた瞬間、小猿の顔は見る間に『本』となっていく。僕はすかさずそこに『他人に攻撃できない』と書く。 

小猿たちはいったい何が起きたかわかっていないようだ。本になったやつの周りでおろおろとしている。 

「…………」 

運転席に座っていた猿はこちらをにらみつけると、無言でこちらを指さしてくる。それを見て、小猿どもはこちらにとびかかってきた。 

「うきゃーーー!!」 

「『クレイジー・ダイヤモンド』の攻撃のほうが、お前らなんかよりも数倍も早かったぞ?」 

所詮は猿だ。まとめて本にされたところへ、僕は先ほどと同じ言葉を書き込んでいく。 
50 無名さん
じゅげむじゅげむ ごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょの すいぎょうまつうんらいまつふうらいまつ
くうねるところにすむところ やぶらこうじのぶらこうじ ぱいぽぱいぽぱいぽのしゅーりんがん
しゅーりんがんのぐーりんだい ぐーりんだいのぽんぽこぴーのぽんぽこなーの ちょうきゅうめいのちょうすけ
51 無名さん
46: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/25(火) 00:24:26.29 ID:pk2yigI50
ゴロゴロと電車から崩れ落ちていく小猿どもを眺めながら、僕は目線を前に移す。運転手に猿が頭から湯気が出てきそうなくらい真っ赤になって怒っている。 

「フーーフーーフーー………」 

「おいおいおいおい、なんだぁその顔は。天狗みたいに真っ赤になってるじゃないか。あ、でもいい気になって鼻高々になってたって点では、確かに天狗だよなぁ〜〜」 

「ウッ……キャアーーーッ!!」 

「エテ公ごときが、この岸辺露伴がかなうとでも? 」 

怒りに我を忘れとびかかってきた猿も、すでに『ヘブンズ・ドアー』の射程内だ。 

「『ヘブンズ・ドアー』! お前に次の一手は…………無いッ!」 

猿は怒りの表情のまま本となり、運よく座席におさまった。 
53 無名さん
47: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/25(火) 00:25:33.98 ID:pk2yigI50
猿が本になったあと、しばらくすると駅に着いた。 

猿にはすでに命令を書いておいた。これ以上この件で被害者が出ることもないだろう。 

駅に降り立ちノビ―ッと背伸びをする。狭いトンネルの中だったからか体が凝っている。夢の中でこるってのも変な話だけど、今度トニオさんのところにでも行くとするか。 

振り返ると、ほか2人の乗客も降りる所だ。加えて、猿も電車から降りようとしている。 

……が、猿だけおかしなことになっている。降りたと思ったらまた電車にまたがり、また降りようとして乗り戻る。そんなことを繰り返している。 

僕はにやにやしながらそいつに近づく。こちらの視線に気づいたのか泣きそうな顔で聞いてきた。 
55 無名さん
56 無名さん
57 無名さん
48: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/25(火) 00:27:44.86 ID:pk2yigI50
「ナ……ナニヲ……?」 

「ああ、さっき簡単な命令をね。お前は毎回夢が終わるころ、僕たちと一緒に電車を降りた。だが、よく考えればそんな必要なんてないはずだ。そもそも、一度の夢で三人とも殺さないのも腑に落ちない。これらにはいったい何の意味があるのか」 

「……」 

猿は諦めて電車に乗ったまま僕の話を聞いている。 

「答えは『タイムリミット』だ。そうだろ? 『この駅から出れば夢から覚める』。つまり、お前もここから出ないと夢から覚めないんだ」 

夜が明けるまで、朝になるまで、この夢は続いている。それは逆にいえば、朝になるまでしか続けられないってことだ。 

「だから僕はお前を本にしたときにこう書いたんだ『他人を攻撃できない』。そして『決して電車から降りれない』ってね」 


サーーッと猿の顔から血の気が引く。僕はすかさず奴の横にある発射ボタンを押した。ポッポ―と小粋な音を立てて電車は猿を乗せて走っていく。 

「ウ、ウキーー! ウッキーーーーッ!!」 

「ま、夢の中で好きなだけお山の大将。電車ごっこの運転手でいるんだな。半永久的に」 

猿の泣き叫ぶ声を聴きながら僕は無人駅を後にした。 
59 無名さん
じゅげむじゅげむ ごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょの すいぎょうまつうんらいまつふうらいまつ
くうねるところにすむところ やぶらこうじのぶらこうじ ぱいぽぱいぽぱいぽのしゅーりんがん
しゅーりんがんのぐーりんだい ぐーりんだいのぽんぽこぴーのぽんぽこなーの ちょうきゅうめいのちょうすけ
60 無名さん
49: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/25(火) 00:28:36.44 ID:pk2yigI50
「……と、まぁこんな体験をしたんだ」 

「……それってよぉ〜〜、本当かあ? どうにも嘘くせぇぜ」 

「なっ! ……おまえが「なんか面白い話はないか」って聞いてきたから話してやったのに!」 

「まあまあ、露伴先生。そう怒らないで。仗助君も、ね?」 

「ふんッ。康一君に免じて、今日のところは許してやる。感謝しろよ、仗助」 

「へいへい」 


50: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/25(火) 00:29:21.32 ID:pk2yigI50
「しっかし、露伴もよく思いついたなぁ。『スタンドを出したまま眠る』なんてよぉ〜」 

「前に承太郎さんからそんな話を聞いていたんだ。一か八かの掛けではあったけどね。なんでも承太郎さんも昔に友人から聞いたそうだ」 

「でもよぉ、それって結局なんだったんだ。スタンド……なのか?」 

「それについては僕もよくわからなかった。『本』にも詳しいことは書いてなかったな。まぁ、スタンドにしろそういった『何か』にしろ。もう人を襲うことはないんだ。僕のおかげでね」 

「だっから、そこがあいまい過ぎてホントかウソかわかんないんだろーが……」 

「まだ信じてないのか! これだから君は嫌いなんだ。もう少しは年上を敬うってことをだなあ〜〜」 

「あーー、しっかし遅いなぁ、トニオさん。いつもより時間かかってるみてぇだけど……」 
62 無名さん
63 無名さん
64 無名さん
51: ◆89yEm7E4qi/N[saga]:2015/08/25(火) 00:31:19.81 ID:pk2yigI50
僕の説教から逃げるように厨房のほうを向く仗助。その態度にいささか怒りがこみ上げてくるが、確かに料理に時間がかかっているようだ。 

「あ……スミマセン。ハンバーグのタネが切らしているのをすっかり忘れていて……今作ってるのでもうしばらくかかるかト……」 

そういいながらトニオさんはボールを抱えてこちらを向く。どうやら挽肉を練っているようだが…… 


「…………ト、トニオさん。作っているところ申し訳ないんだが……その……、魚料理に変更できないかな。今、少し肉……という気分ではなくてね……そのハンバーグなら、こいつらにあげるから……」 

「構いませんが……大丈夫デスカ? 顔色がすぐれないようですガ……」 

「ああ、問題ない……はずだ」 

どうやら、しばらく挽肉は食べられそうにない……残念だ。 


『猿夢』――終わり 
66 無名さん
67 無名さん
1:へっぽこぬし[sage] 2016/05/14(土) 00:29:47.01CjBEUu5eO

くの名前は岸辺露伴、漫画家だ。 
これからぼくが話す体験談は、ぼくが実際に体験した物語だ。ネットのウワサや、そんじゃそこらの都市伝説なんかとはワケが違う。 
本当に、ぼくが体験したことなんだ…皮肉なことにね… 

その日は、雑誌の取材があった。 
新人記者で名前は、天野海空…海の空とかいてみそらと読むらしい、スリーサイズは…っと話が脱線してしまったな。本題に戻ろう 

天野「本日は、よろしくお願いしますね露伴先生!」 

露伴「あぁ、よろしくたのむよ。それにしても君はあれだな、なんというか…随分と地味だな。」 

天野「そんなに地味?ですか…?」 

露伴「あぁ、海の空でみそら。いいとは思うけど…名前ほど、清純そうには見えないね。自然というよりも、都会の雑居ビルみたいな感じだ。」 

天野「えーと…もしかして私、悪口言われてます?」 

露伴「悪口?違う違う!これは、ぼくの率直な感想だよ。」 

天野「感想…ですか。私には悪口にしか」 

露伴「そんなことは、どうでもいい。ぼくのことを取材したいんだろ?だったら早くしてくれ」 

天野「そ、そうですね…そうでした…では、取材させていただきます。」
69 無名さん
2:へっぽこぬし[sage] 2016/05/14(土) 00:42:39.00CjBEUu5eO

天野「先生は、読者に何を伝えたいと思っていますか?」 

露伴「何を伝えたいか?そうだな、簡潔に言えば、読者が共感できるリアリティだ。とういうか、むしろそれ以外に思いつかない。」 

天野「はぁ…そういうものなんですか?」 

露伴「あくまで、ぼく自身としてはね…というか、そんなこと聞くまでもないだろ。ぼくの作品を読んでいれば、わかることだと思うが?」 

天野「もちろん読んでいますよ!ピンクダークの少年!正直最初は、絵が苦手だとか、グロテスクな表現が苦手だとかで、あまり読んでなかったんです…」 

露伴「本人を目の前に、随分と大胆な告白だな。」 

天野「す、すみません!つい…私、思ったことをすぐ口に出してしまうので」 

露伴「別に構わないさ、君はあくまで雑誌記者だ。もし君がぼくの担当だったら、もう二度と外に出られないようにしているかな。」 
71 無名さん
じゅげむじゅげむ ごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょの すいぎょうまつうんらいまつふうらいまつ
くうねるところにすむところ やぶらこうじのぶらこうじ ぱいぽぱいぽぱいぽのしゅーりんがん
しゅーりんがんのぐーりんだい ぐーりんだいのぽんぽこぴーのぽんぽこなーの ちょうきゅうめいのちょうすけ
72 無名さん
73 無名さん
晒されたくないから荒らします
3:へっぽこぬし[sage] 2016/05/14(土) 01:03:00.29CjBEUu5eO

天野「そ、外に出られないのは、困りますねぇ〜あはははは…」 

露伴「ま、冗談はさておき、取材の続きだ。他にも聞くことを用意してきたんだろ?」 

天野「あ、はいそうなんですけども。私個人的にしてみたくなった質問ができました」 

露伴「君個人の?」 

天野「はい、先ほど露伴先生はリアリティを伝えたいと、おっしゃいましたよね?」 

露伴「あぁ、そうだけど」 

天野「そこで、露伴先生は都市伝説とか迷信とかを信じたりはしますか?」 

露伴「愚問だな、ウワサ話ならまだしも都市伝説だなんてこれまで一度も信じたことないね」 

天野「口裂け女とか、てけてけとかもですか?」 

露伴「当たり前だ、あまりにも非現実的だ、それに…どうして恐怖体験をして死んだり、それに関わったやつらも行方不明になったりしてるのにそんな話が世の中に出回ってるんだ?大体、その時点で誰かが作った話だとわかるだろ?」 

天野「はい、先生の言うことはごもっともです。私も、そこには疑問を抱く人間です。ですが…実際に都市伝説を体験して、生きて帰ってきた人の話だとしたら、どうです?」 
75 無名さん
76 無名さん
4:へっぽこぬし[sage] 2016/05/14(土) 01:11:50.73CjBEUu5eO

露伴「生還した人物の話だとしたらか?」 

天野「はい、そうです」 

露伴「それも信じられないね。実際に起きた第二次世界大戦の生還者で、今も戦時中の状況を語り部として活躍してる人物ならともかく、ありもしない体験談を語られて、信じるヤツはそういないよ。」 

天野「露伴先生はとことん、現実主義なんですね。」 

露伴「まぁな、(いつもいつも、非現実的なことばかりだから、現実に逃げたくもなるのさ。)」 

天野「何か、言いましたか?現実がどうとか…」 

露伴「エスパーか君は!いや、別に…何も言ってはないが…(もしかして口に出してたか?)」 

天野「エスパーではないですけども…そうですか、私の空耳ですかね?」 

露伴「あぁ、そうだきっとそうに違いない」 
78 無名さん
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5:へっぽこぬし[sage] 2016/05/14(土) 01:20:01.22CjBEUu5eO

天野「話、逸れちゃいましたね。」 

露伴「あぁ、そうだな…」 

天野「コホン、では、改めて…その、生きて帰ってきたって言うのは、ある親子の話なんです。」 

露伴「ほう、因みにその親子ってのはどういう親子なんだ?」 

天野「はい、父親と娘さんです。ある日二人はこのM県の県境にある山にドライブしにいったらしいんです。」 

露伴「ドライブ?なんでまた山なんかに」 

天野「当初の予定は、娘さんと普通に、街中をドライブするつもりだったらしいんですよ。けれど、運転するうちにいつの間にか、その山に入っていたそうなんです。」 
81 無名さん
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6:へっぽこぬし[sage] 2016/05/14(土) 01:31:51.32CjBEUu5eO

露伴「いつの間にか?はぁー…なんというか、あまりにも唐突だな。作り話のニオイがプンプンしてきたぞ。」 

天野「そ、そうおっしゃらずにしっかりと聴いてくださいよ!」 

露伴「それで、いつの間にか山に入ってたその親子はどうなったんだ?」 

天野「はい、しばらくは山道を道なりに進んでいたんです…娘さんはひどく怖がって、父親に戻ろう、戻ろうって、必死に制止してたそうなんです。ですが、父親はそんな娘の反応を面白がってどんどん先に進んでいったんです。」 

露伴「それから?」 

天野「車は、整備された道を抜けて、本当の山の道を走っていました。すると、突然エンジンが止まったんです。山に入る前に道の駅があったんですが、車を置いていくわけにもいかないし、そのまま車内で一泊することに決めたらしいんです。」 

露伴「おい、待て道の駅があったっていう記憶があるんだろ?だったらなんで『いつの間にか山に入ってた』なんていう現象が起きるんだ?」 

天野「はい、私もそれを本人に訪ねたんですが…本当にわからないらしくて」 

露伴「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいそれじゃあ、本当に信ぴょう性が薄くなってくるぞ?ますます作り話だという確信ができてきた」 
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9:へっぽこぬし[saga] 2016/05/15(日) 02:05:03.18WlSoI3UjO

天野「そうですが、これは事実です。実際に起こったことなんです」 

露伴「嘘臭いが、まぁ、いい…今回は漫画の打ち合わせじゃあなくて、雑誌の取材なんだ…大目に見て…いや、聴いてやる」 

天野「しばらく寒さに耐えていると、次第に日もくれて、夜になりました。夜中の山は静かで、たまに風で木が揺れる音ぐらいしかしなかったらしいんです。でも…」 

ケン…ソウ…メツ…ケン…ソウ…メツ… 

天野「といった不気味な声が、呪詛のように聞こえはじめたんです…車内から外の様子を伺っても真っ暗で何も見えなくて…でも次第にその声は近づいて来ていたそうです」 

露伴「随分と妙な声だな…真っ暗闇で、そんな声が近づいて来るだなんて、考えたくもないね。」 

天野「話は、これだけじゃあないんです。」 

露伴「そんなことは、言われなくてもわかる…近づいて来たやつが、何なのかわからないって言うんじゃあ話にならない」 

天野「えぇ、その『近づいて来たもの』なんですがね…声が近づくと、その辺りが光り初めて、そいつの姿を映し出したんです。」 
88 無名さん
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露伴「一体どんなやつだったんだ?その不気味な声の主は」 

天野「髪は長くて、顔が大きく、そして口は横一線にニタァっと、笑っているように裂けていて、その目はまるで、何も見ていないようで、しっかりと、こちらを見ているような、そんな横に大きな目をしていて、なんでも足が…太く、一本だけ生えていた化け物だったそうなんです…」 

露伴「ふむ…」 

天野「あれ、今度は嘘だと否定しないんですね?」 

露伴「それは父親だけが見たのか?」 

天野「はい、見たのは父親だけです…」 

露伴「その父親、ここ最近何か、変なことを言ったり、不思議なことを起こしたりはしていないか?例えば…スタンド…だとか、何もないのに突然物が動いたりとか…」 

天野「スタンド?いえ、特にそんなことはなかったですよ?」 

露伴「そうか…すまない、話の腰を折ったな…続きを話してくれないか」 

天野「は、はい…(さっきから散々折っていたくせに!謝ってもないくせに!)それを見た父親は、なぜか叫ぶよりも先に『娘さんが起きないか』ということに、気を回して叫んだり悲鳴を上げたり、なんてことはしなかったそうです」 
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11:へっぽこぬし[saga] 2016/05/18(水) 03:13:44.12tJNffm5JO

天野「父親が声を抑えていると、その化け物は車の脇を通り過ぎて、山の奥に行くようでした…ホッとして娘の方を見ると、そこに『いた』んです。窓の外に、ソイツが」 

露伴「まるでホラー映画のような話だな。それで?娘と父親はどうなったんだ?ソイツに食われでもしたのか?」 

天野「父親は…間近でみたそれに、恐怖ではなく怒りを覚えたんです…娘に近づかれたという怒りを」 

露伴「恐怖よりも怒りを感じるとは…だが、逆に『その感情こそリアリティがあってイイ』」 

天野「実際の出来事だと信じてくれるんですか?」 

露伴「信じてるわけではない、ただ、ウソのままだと否定しているわけでもない。ウソかホントかは君の話を全部聞き終わってから決めることにした」 

天野「では、信じていただくために続きを、ありのまま起こったことをお話します。」 
94 無名さん
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12:へっぽこぬし[saga] 2016/05/18(水) 03:22:17.29tJNffm5JO

天野「父親は怒りにまかせて、その化け物を罵倒しました…それも、怒鳴り声を上げてです…もちろん、その声で娘さんも目を覚ましました。目を覚ましたのを知って、父親は我に返りました…でも」 

露伴「なんだ?娘が起きないようにしてたから、ちょっと申し訳ない気分にでもなったのか?」 

天野「いいえ、違います…その逆です。娘さんを見た父親は…娘さんに恐怖を覚えたんです。」 

露伴「何だって…?」 

天野「娘さんは目を覚ました。でも、娘さんは目が覚めた瞬間ケタケタ笑いながらつぶやき始めたんです…ハイレタ…って何度も笑うように」 

露伴「ハイレタ…?もしかして、中に入る入らないの入れた…か?」 

天野「そうかもしれませんし、そうじゃないかもしれません…でも、娘さんが異常なのはわかります…目つきや表情がどんどん、ソイツに似てきたんです…そして、ハイレタってつぶやきもどんどん、ケン…ソウ…メツ…っていうのに変わっていったんです…」 

露伴「そのとき、ヤツはそばにいたのか?」 

天野「それが、消えていたんです車の外を見回しても、いなかったそうなんです。」 
97 無名さん
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16:へっぽこぬし[saga] 2016/05/24(火) 06:22:14.82+LkejgksO

露伴「消えていた…?」 

天野「はい、まるで煙みたいに…それでですね、娘さんをこのままにはしておけないと思った父親は、車のエンジンをダメ元でかけたんです。そしたら、急にかかったんです、エンジンが」 

露伴「車を動かしてどこへ行こうってんだ?まさか、病院じゃあないだろうな?」 

天野「いえいえ、山の入口付近にある小さなお寺なんですけども、そこの住職さんに駆け込んだそうなんです。」 

露伴「普通の住職なら、こんな状況の娘さんを見てさぞ驚くだろうな、驚くよりも恐怖の方が出てきそうだけどな」 

天野「でも、その住職さんはそのどちらでもなかったんです…父親から話を聞くと呆れたようにこう言いました」 

住職『気休めにしかならないが…お祓いをして、四十九日間様子を見よう…もし四十九日以内に元の様子に戻らなかったら…諦めるかない』 

露伴「無責任な住職もいたもんだな。だが治せるからそんな対応をしたんだろ?」 

天野「いえ、その住職はこの症状…いや、現象を知ってはいても治し方は知りませんでした。本当にただの気休め程度なんです。」 

露伴「おいおい、それ本当かよ…だったらなおさら無責任じゃあないか…それで、なんでこんな話をぼくにしたんだ?」 

天野「はい、その…ですね」 

露伴「大体察しはついた。つまり今日、この日が」 

天野「お察しのとおり四十九日目なんです」 

父親の名前は天野敏夫、娘の名前は天野茉莉(まり) 
つまりは、この天野海空の旦那と娘の話だったのだ…天野海空は自分の娘を救ってほしいのだ。だが謎がある。なぜ彼女は医者でもなくましてや霊媒師でもないこのぼくにこの話をもちかけたのかなぜ、娘を救えると確信していたのか。 
99 無名さん
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