8 無名さん
今だって。
今日は何度達したか、三回数えた辺りでもうカウントすることは野暮だった。頭上の男は忙しなく次のスキンの袋を歯で噛み千切って装着すると、返事も待たずに降谷の中に突き入れた。
「っはう……!」
十分に柔らかくなったそこを、まだ開拓しようと欲深く奥へ奥へと腰を進めてくる。尖った顎先から滴る汗のひとしずくすら愛おしい。
陶酔するような視線を性感のせいにして、降谷は目を細めた。びっくりするくらい良い男が自分に覆い被さっている。
手形がつくほど降谷の腰を掴む男の頭の中には今、自分しかいない。それが降谷の穴だろうが構わない。例えようのない感情は、間違いなく幸福そのものだった。開きっぱなしの股関節が鈍く痛むけれど、やめてくれなんて間違っても口にしない。今だけは誰が見たってこの男は降谷のものだと自意識過剰を振りかざす。
正常位から横臥に体勢を変えられた後、左足を持ち上げ抱えられ、十字になった結合が深まる。目もあてられないほど溶かされたそこから、ぐじゅ、とジェルが押し出されて腿を伝うのにさえ、呼吸が震える。
「ア、あ、……んん、あ、あかいっ……!」
律動のたびにきつく眉を寄せて押し寄せる快楽に耐える赤井の顔を、まだ見慣れていなくて生理的な涙で滲む視界でひたすら彼を追った。必死に腰を振りたてるこの男が欲しい。喉の奥が焼けるように熱くて、連動するように赤井を包む壁がぎゅうと搾取を強めた。こら、と咎めるように抱えた降谷の膝辺りに歯を立てて、黒髪の男はニヤリと笑った。それでも腰の動きは止まらず、不意に熱い体が覚えたての予感を見つけてたじろぐ。
「あかい、それ、ん、だめ、だめってば……」
「ッは、……もう、出すからな」
ぐうっと一際奥を突かれて瞼の裏に星が飛ぶ。あかい、きもちいい、ずっとこうしていて。そう希うのに堪えきれず、もう薄くなった精液がぴゅくぴゅくと押し出されるように腹の上に零れていくのが、うっすらと分かった。赤井が追いかけるようにスキンの中に放つと、撃墜するように降谷の上に覆い被さった。
降谷はぴったりと重なった上半身の肌の温度だけをずっと追っていた。荒い呼吸を整える背中に手を伸ばせないまま、もう何度も。
今日は何度達したか、三回数えた辺りでもうカウントすることは野暮だった。頭上の男は忙しなく次のスキンの袋を歯で噛み千切って装着すると、返事も待たずに降谷の中に突き入れた。
「っはう……!」
十分に柔らかくなったそこを、まだ開拓しようと欲深く奥へ奥へと腰を進めてくる。尖った顎先から滴る汗のひとしずくすら愛おしい。
陶酔するような視線を性感のせいにして、降谷は目を細めた。びっくりするくらい良い男が自分に覆い被さっている。
手形がつくほど降谷の腰を掴む男の頭の中には今、自分しかいない。それが降谷の穴だろうが構わない。例えようのない感情は、間違いなく幸福そのものだった。開きっぱなしの股関節が鈍く痛むけれど、やめてくれなんて間違っても口にしない。今だけは誰が見たってこの男は降谷のものだと自意識過剰を振りかざす。
正常位から横臥に体勢を変えられた後、左足を持ち上げ抱えられ、十字になった結合が深まる。目もあてられないほど溶かされたそこから、ぐじゅ、とジェルが押し出されて腿を伝うのにさえ、呼吸が震える。
「ア、あ、……んん、あ、あかいっ……!」
律動のたびにきつく眉を寄せて押し寄せる快楽に耐える赤井の顔を、まだ見慣れていなくて生理的な涙で滲む視界でひたすら彼を追った。必死に腰を振りたてるこの男が欲しい。喉の奥が焼けるように熱くて、連動するように赤井を包む壁がぎゅうと搾取を強めた。こら、と咎めるように抱えた降谷の膝辺りに歯を立てて、黒髪の男はニヤリと笑った。それでも腰の動きは止まらず、不意に熱い体が覚えたての予感を見つけてたじろぐ。
「あかい、それ、ん、だめ、だめってば……」
「ッは、……もう、出すからな」
ぐうっと一際奥を突かれて瞼の裏に星が飛ぶ。あかい、きもちいい、ずっとこうしていて。そう希うのに堪えきれず、もう薄くなった精液がぴゅくぴゅくと押し出されるように腹の上に零れていくのが、うっすらと分かった。赤井が追いかけるようにスキンの中に放つと、撃墜するように降谷の上に覆い被さった。
降谷はぴったりと重なった上半身の肌の温度だけをずっと追っていた。荒い呼吸を整える背中に手を伸ばせないまま、もう何度も。
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16 無名さん
「零くん、零……いいか?」
「ん、んん、あ、ちょっ……と、待って」
「待つ? 何を」
「いや、だから、それ……待て、って! や、だからそれは、嫌だって!!」
今の今まで身体の下で艶やかに喘いでいた恋人が、突然正気に戻ったように身体を離す。
仰向けになった体勢で、褐色の引き締まった腹筋がひくひくと動くのが色っぽかったのに、あっという間にうつぶせに隠されてしまった。
「こら、背中を向けるな」
再び自分の方を向かせようと、赤井は降谷の肩に手をかける。
「いやだ」
「なんで」
「なんでもだ」
「いいからこっちを向け」
「だから、やだって! もぉ!」
ぱしん、と手をはらわれる。
「零くん」
「うるさい」
「こっちを向いてくれ」
「ばか」
「馬鹿?」
「だって、お前、」
「ん?」
「かけようとしただろ!!」
「……んん?」
「んん? じゃない! お前また、僕の顔にかけようとしたくせに!」
ああ、今日もやっぱりまたダメだった。
苦笑いしながら、赤井は可愛い恋人の右頬を撫でる。
「またそうやって、ごまかす……もぉ、いつも嫌だって言ってるのに」
文句を訴える言葉遣いとは裏腹に、降谷は赤井の大きな左の手のひらにすりすりと頬を懐かせる。
彼のこういう甘え方は限りなく猫に似ているなと思う。
「だからしなかっただろう」
何を、とは言わないが。
さて今日こそはどうだろうかと虎視眈々と狙いを定めていた赤井の不埒な欲求の詰まったライフルは、今は宙ぶらりんの状態で哀しく空を仰いでいる。今日も今日とて、その本懐を遂げる前にそれに気づいたターゲットに阻止されてしまった。
「ん、んん、あ、ちょっ……と、待って」
「待つ? 何を」
「いや、だから、それ……待て、って! や、だからそれは、嫌だって!!」
今の今まで身体の下で艶やかに喘いでいた恋人が、突然正気に戻ったように身体を離す。
仰向けになった体勢で、褐色の引き締まった腹筋がひくひくと動くのが色っぽかったのに、あっという間にうつぶせに隠されてしまった。
「こら、背中を向けるな」
再び自分の方を向かせようと、赤井は降谷の肩に手をかける。
「いやだ」
「なんで」
「なんでもだ」
「いいからこっちを向け」
「だから、やだって! もぉ!」
ぱしん、と手をはらわれる。
「零くん」
「うるさい」
「こっちを向いてくれ」
「ばか」
「馬鹿?」
「だって、お前、」
「ん?」
「かけようとしただろ!!」
「……んん?」
「んん? じゃない! お前また、僕の顔にかけようとしたくせに!」
ああ、今日もやっぱりまたダメだった。
苦笑いしながら、赤井は可愛い恋人の右頬を撫でる。
「またそうやって、ごまかす……もぉ、いつも嫌だって言ってるのに」
文句を訴える言葉遣いとは裏腹に、降谷は赤井の大きな左の手のひらにすりすりと頬を懐かせる。
彼のこういう甘え方は限りなく猫に似ているなと思う。
「だからしなかっただろう」
何を、とは言わないが。
さて今日こそはどうだろうかと虎視眈々と狙いを定めていた赤井の不埒な欲求の詰まったライフルは、今は宙ぶらりんの状態で哀しく空を仰いでいる。今日も今日とて、その本懐を遂げる前にそれに気づいたターゲットに阻止されてしまった。