19 無名さん
>>17の続き
長いこと片思いしていたマルコさんにだけは、話しかけることができなくなってしまった。
だって、情けないじゃない?
好きな人がいるのに、他の男と…なんて。
泥酔していたことなんか、理由にならない。
そう思っていたら、マルコさんの顔が見れなくなってしまった。
もともと、隊も違うから、気をつけていれば、会う機会なんてない。
そんな風に、自己嫌悪と戦い続けた三か月後に、まさか、こんなびっくりな展開が待っていようとは。
「……どうしよう…」
「どうしたいの?」
ナースさんが、うずくまったわたしの背中をなでてくれる。
「……船、降りたくない」
「…そう」
ナースさんのやわらかい声が、胸にしみる。
不思議と、子供を堕ろしたいとは思わなかった。
「モビーディックで産みたいなら、まず、船長に報告ね」
「…許して、くれるかな…」
「大丈夫よ、船長だもの」
子供のようになってしまったわたしを、ナースさんが慰めてくれる。
おかげで、すこし元気が出た。
「……とーさんに、報告する」
涙を毛布に吸い込ませて、わたしは、ベッドを降りた。